シリコンインプラントを用いた乳房再建術における重大な長期的合併症と して、T 細胞性非ホジキンリンパ腫であるブレストインプラント関連未分化 大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)が報告されるようになり、悪性疾患が合併症に加わったことで世界的にも非常に注目されている。本邦での BIA- ALCL 患者は現時点まで2人の発生が報告されており、今後報告が増加して いく可能性は十分考えられる。シリコンインプラントは表面形状により大きく2種類に分けられ、表面に細かい凹凸がある textured type と、滑らかな smooth typeがある。textured typeは、回転などの位置異常や被膜拘縮が起こりにくい新しい世代の人工物であるが、BIA-ALCL は textured type で有意に発生率が高いとされている。しかし、BIA-ALCL や被膜拘縮 の起こるメカニズムについては明らかにされていないのが現状である。一般的に生体材料に対する免疫学的応答として、マクロファージによる 貪食と線維芽細胞の活性化により被膜が形成され、それらは2~4週程度 で反応が消失するとされている。一方で、人工乳房に対する免疫学的応答に対する詳細な研究はこれまで報告がなく、申請者は texturedtype シリコンに対するマクロファージの集積および TGF-β の産生といった免疫学的応答が120日後も持続することを明らかとしたこれにより、textured typeシリコンは他の生体材料と比較しても免疫応答が顕著に長いことが示された。また、これらのtextured typeシリコンに対するマクロファージによる免疫応答に CARD9 が関与する事を突き止めた。
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