研究課題/領域番号 |
20K18450
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
荻野 晶弘 東邦大学, 医学部, 教授 (70385657)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Fibrocyte / bFGF / 血管新生 / 組織修復 / 三次元培養 / CXCL12 / CXCR4 |
研究実績の概要 |
以前の研究で,好塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を投与したラット皮膚創部の蛍光二重染色からCD34とProcollagen1を共発現するFibrocyteが同定された.bFGFにより創部へ集積したCD34+/Procollagen1+ fibrocyteが血管新生に関与していることをin vivoで証明した.現在は,このCD34+/Procollagen1+ fibrocyteによる血管新生をさらに検証するため,肉芽組織をコラーゲンゲルに移植しFibrocyteの発現性や血管新生性についてin vitroで検討した.またFibrocyteのマーカーであるCXCL12/CXCR4ケモカインの関与についても検討した。手法としてはSDラット背部に全層性皮膚潰瘍を作成し, bFGFを投与した創部から肉芽組織細胞を抽出し,コラーゲンゲル培地にて三次元回旋培養を行った.コラーゲンゲル内に増殖したFibrocyteは,bFGF投与群ではコントロール群に比して有意な管腔様構造の形成を認めた.またRT-PCR解析では,bFGF投与群においてCD34の有意な発現増加が確認された.このことは,in vitroにおいてもbFGF誘導性CD34+ fibrocyteによる血管形成能を示唆した.CXCL12/CXCR4の発現性はRT PCRにてCXCR4およびそのligandであるCXCL12がbFGF投与群での有意な増加が確認された.これらの増加傾向は創部肉芽組織における解析結果よりもコラーゲンゲルを用いた解析で顕著に表れていた。よってコラーゲンゲルを用いた3次元培養がFibrocyteの検出に有用であり、血管新生性CD34+/Procollagen1+ fibrocyteの誘導におけるCXCL12/CXCR4の関与が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット皮膚の正常修復過程およびbFGF投与下におけるFibrocyte発現解析の実験系を確立した.またin vitroにおけるFibrocyteの発現解析を行うためにコラーゲンゲルを用いた三次元培養の実験系を確立した.組織修復過程で生じた肉芽組織をコラーゲンゲルにて三次元培養を行い,Fibrocyteの増殖と血管様構造の新生を証明した.またbFGFとケモカインシグナル分子CXCL12/CXCR4の関係性をRT-PCRや免疫染色を用いて検討を行った.
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今後の研究の推進方策 |
bFGFによる皮膚潰瘍部肉芽組織の血管新生では,CD34+/Procollagen1+ fibrocyteの直接的関与をin vitroで証明した.ケモカインシグナル分子CXCL12/CXCR4はbFGFによる発現増加も証明した.今後は,CXCL12のアンタゴニストであるAMD3100を用いた実験系を確立し,CXCL12/CXCR4によるCD34+/Procollagen1+ fibrocyteの誘導性の特異性について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にラット皮膚潰瘍肉芽組織から採取された組織を用いて,さらなるケモカイン(CXCL12/CXCR4) によるCD34+/Procollagen1+ fibrocyteの発現誘導性の特異性の解析を行う予定である.高額な培地や試薬(免疫染色,PCRに使用)を複数購入する必要があるため,本年度の予算の一部を次年度に繰り越した.
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