複合型吸収性スカフォールドの表面改質が軟骨基質の産生および軟骨被覆率に及ぼす経時的な影響の検討 エタノール処置により表面改質された複合型吸収性スカフォールドと軟骨組織との親和性を評価した。肉眼所見および組織学的検討において、移植後 10 週目ではスカフォールドの一部に足場の小孔が透見され、移植後 20 週目には、スカフォールド表面に白色色調や光沢が観察され、耳介特有の輪郭形状がより明瞭に表現された.組織学的には,移植後 10 週目では,Safranin O 染色陽性領域がスカフォールドの表面部のみで、内部の陽性反応は不十分であったが、移植後 20 週目では、スカフォールドの辺縁部の Safranin O 染色陽性領域が内部に向けて拡大し、表面のみでなく内部においても陽性領域が観察された。この結果,エタノール処理を行ったスカフォールドの表面に生じた軟骨再生は、経時的に進行し、中心部に向かって軟骨再生が促進することが示唆された。 軟骨基質の産生と軟骨被覆率の検討もおいて、Safranin O 染色された軟骨再生の面積比およびスカフォールドが再生軟骨により被覆される軟骨被覆率を調査し。軟骨再生面積比は,移植後 10 週目 (約20%) に比較して,移植後 20 週目において有意な高値 (約40%) を示し,経時的な軟骨基質の増加が認められた。一方,軟骨被覆率は,10 週目において 63% であったが,20週目には88% に有意に増加した。 これらの結果より,表面改質した複合型吸収性スカフォールドは,経時的な軟骨基質産生を促進し,耳介形状を長期維持するための芯材として適していることが判明した。
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