前年度までの心理ストレス処置が咬筋の侵害応答を増大させる可能性を示した。最終年度では、1)実験としてサンプル数を増加させ、結果の正確性を確認すること。2)1)のモデルへのNSAIDSの投与がストレスに関連する不安行動、および咬筋侵害応答を軽減させるか否かを検討した。まず1)に関するデータは2022年に論文発表に至った(PMID: 35842906)。一方で、同時に実施していたNSAIDS投与による1)への効果に関して、まず不安行動に変化(軽減)がみられた。しかしストレス誘発痛の軽減傾向はみられたが有意ではなかった。この結果から、NSAIDSはストレス誘発性の不安行動は抑制するも、ストレス誘発痛の軽減には不十分であると考えられた。よって薬剤の増量を検討し、少数のサンプルを用い同様のテストを実施した。しかし不安行動の抑制効果は見られるものの、依然、有意な抗侵害効果はみられなかった。薬物の増量や投薬頻度の増加を検討するも、予想される副作用(胃潰瘍など)を考慮した結果、NSAIDSを用いた本実験の継続は、適切ではないという判断にいたった。一方で、本研究者らはこれまで全身運動によるストレス制御効果について検討を開始している。これは有酸素運動が脳内の炎症抑制効果があることを根拠とするストレス解消のメカニズムを解明するものである。本研究は最終年度より本仮説の解明を開始した。そしてトレッドミル走が心理ストレス誘発の咬筋疼痛関連行動および頚髄の興奮性を軽減できることを解明したことになる。心理ストレスは不安行動を起こすこと、そして顔面部の痛み応答を増大させることは確実である。そして本課題の成果から言えることは、ストレス管理(解消)がよりよいQOLを維持するために重要であること。また比較的、使用しやすいNSAIDSも少なからずストレス解消効果があるということである。
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