研究課題
「不安」は恐怖や危険から回避するために備わっている心身の防御システムである。不安は我々にとって身近な精神状態であるが、その発現と制御機構はほとんどわかっていない。申請者は、興奮性神経伝達物質の受容体の一つであるカイニン酸型グルタミン酸受容体の機能解明をするべく研究を行っている中で、抑制性神経細胞のGluK3サブユニットを欠失したマウスで不安が減少することを発見した。またGluK3は前頭前皮質に強く発現することやGluK3 を抑制性神経細胞で欠損させると抗不安行動を発現することから、「扁桃体から刺激を受けた前頭前皮質の抑制性神経細胞のカイニン酸受容体GluK3サブユニットが不安を制御する本体である」という仮説をたてた。GluK3陽性抑制性神経を可視化できる遺伝子改変マウスの作製に着手し、キメラマウスが1匹得られ、F1マウスが生まれ繁殖に成功した。また、GluK3が前頭前皮質の抑制性神経細胞に発現するのか、GluK3 mRNAと抑制性神経細胞マーカーであるGAD1 mRNAのIn situハイブリダイゼーションを行い、共局在を確認したところ、抑制性神経細胞にGluK3は発現しないことがわかった。この結果から、当初の予定の前頭前皮質だけに標的を絞らず、他の領域に解析の幅を広げるべきだと判断した。そこでGluK3発現領域を組織学により詳細に検討したところ、不安制御と関連のある、前帯状皮質(ACC)、梨状皮質(DEn)に強い発現が認められた。一方で、海馬・扁桃体・分界状床核・側坐核・線条体での分布は弱かった。この結果から大脳皮質領域を起点としたGluK3陽性神経細胞の回路に着目することにした。作製したマウスを用いて、大脳皮質でのGluK3陽性神経細胞の神経回路可視化や、神経特異的活性制御を行う見通しがたった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 298 ページ: 101933~101933
10.1016/J.JBC.2022.101933
Neuroscience Research
巻: 173 ページ: 62~70
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