研究課題
摂食時、味覚は極めて重要な役割を果たす。アミノ酸は、生体を形作るタンパク質の構成成分として必要不可欠な物質であり、現時点でうま味受容体T1R1/T1R3 が唯一のアミノ酸の味覚受容体として報告されている。しかしながら、過去の報告から、うま味情報はアミノ酸要求を生じる情報として重要性は低いと考えられ、さらに、外界からの摂取が必要不可欠な必須アミノ酸はうま味受容体に対し低親和性を示す。従って、うま味受容体が外環境からのアミノ酸摂取を担う唯一の受容体として機能するとは考えにくい。予備実験の結果から、本来腸管で機能するアミノ酸輸送体が、口腔におけるアミノ酸の味覚受容にも関与している可能性を見出した。さらに、この経路はメタボリックセンサーKATPチャネルにより制御を受けるカロリー受容系のシグナル経路としても機能する可能性が考えられる。本研究では、この新規アミノ酸受容体と情報伝達機構の解明を目指す。現在までに、マウス舌前方部を支配する茸状乳頭、および後方部を支配する有郭乳頭の味蕾に、ナトリウム依存性中性アミノ酸トランスポーター(ASCTs)が発現することがわかった。さらに、マウス鼓索神経応答解析術の結果から、このASCTsの透過性の高いアミノ酸でASCTs阻害薬であるL-γ-Glutamyl-p-nitroanilide(GPNA)舌処理により、応答の抑制が生じることが明らかになった。他の味質、および透過性の低いアミノ酸ではこの効果は認められなかった。さらに透過性の高いアミノ酸では、低濃度Naの添加により応答の増強が生じ、これはGPNAにより消失することがわかった。同様の結果は、T1R3遺伝子欠損マウスにおいても認められた。
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Biochemical and biophysical research communications
巻: 557 ページ: 206-212
10.1016/j.bbrc.2021.04.022