研究課題/領域番号 |
20K18459
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山口 優 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (50823308)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Rab44 / Rab GTPase / 破骨細胞 / Rab44ノックアウトマウス / 骨組織・骨代謝解析 |
研究実績の概要 |
Rab44と結合するタンパク質を同定することによって、極性小胞輸送がどのように破骨細胞分化制御に関わっているかを明らかにするため、免疫沈降法を行った。Rab44とともに沈降してきたタンパク質を質量分析器にかけ、今までのところ、2つの候補分子を同定した。本年度は、同定したタンパク質と結合するかを共免疫沈降法にて確認するため、結合候補分子の野生型、および変異体発現細胞を作製した。 Rab44遺伝子欠損マウスを用いて、大腿骨、脛骨のマイクロCT解析を行った。また大腿骨、脛骨の骨髄から破骨細胞を培養した。マイクロCT解析の結果、Rab44遺伝子欠損マウスでは海綿骨の骨梁間隔の拡大傾向が認められた。 Rab44遺伝子欠損マウスの骨髄由来破骨細胞の解析では分化程度を確認するため、TRAP染色を行った。その結果、Rab44遺伝子欠損マウスでは破骨細胞数の増加と巨大化が見られた。また、骨髄由来破骨細胞のmRNAを回収し、リアルタイムPCRで破骨細胞分化マーカーの遺伝子発現程度を見てみると、遺伝子欠損マウスでの発現量の上昇が認められた。次に骨吸収能力を見るためにosteo assay plate上で骨髄由来破骨細胞の培養を行なった。その結果、骨吸収面積は遺伝子欠損マウスで増加することがわかった。骨髄由来破骨細胞を各種細胞内オルガネラマーカーで蛍光免疫染色し共焦点顕微鏡で確認したところ、遺伝子欠損マウスでゴルジ体のマーカーであるGM130の核周囲の膜上集積が認められた。以上の結果は以前、代表者の報告していた、Rab44ノックダウン細胞での結果と一致している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rab44結合するタンパク質については現在までにRab44の結合候補分子の発現細胞の作製は完了している。今後は作製した細胞を用いて共免疫沈降法を行っていくだけであるので、おおむね順調に進展している。 Rab44遺伝子欠損マウスの解析については、マイクロCT解析を行う匹数を重ねていく段階であり、このままの進み具合で、より正確なデータの収集を行えるものと考えている。 また、正常状態における解析に加えて、卵巣摘出マウスの解析についても現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
Rab44結合分子の同定に関しては、今後は作製した結合候補分子のドメイン欠損体やRab44のドメイン欠損体、活性型、不活性型を用いて免疫沈降法を行う。このことによりRab44との結合ドメインや、Rab44の活性の有無による結合能を明らかにする。 Rab44遺伝子欠損マウスの解析について、現在までに行なっているマイクロCT解析の匹数を増加させていくことに加え、胎仔、新生仔を用いて透明骨格標本を作製し、骨組織染色をアリザリンレッドとアルシアンブルーによる二重染色法により行い、それぞれ石灰化した骨と軟骨を染め分け骨格全体での差異の評価を行なっていく。また骨組織切片を作製し、免疫蛍光染色でRab44ノックアウトによる小胞輸送関連因子(Rab5、Rab7)、破骨細胞活性関連因子(カテプシンK)の局在や量の変動を解析する。このことにより実際の生体内にRab44が及ぼす影響を明らかにする。 骨粗鬆症病態モデルである卵巣摘出マウスに関しても同様の解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
Rab44遺伝子欠損マウスに関して、今年度は正常状態におけるマイクロCTの解析のみを行なったため、次年度使用額が生じた。次年度は胎仔、新生仔を用いて透明骨格標本を作製のための消耗品の購入に充てる。また骨組織切片の作製、及び免疫蛍光染色でRab44ノックアウトによる小胞輸送関連因子(Rab5、Rab7)、破骨細胞活性関連因子(カテプシンK)の局在や量の変動の解析に必要な各種抗体や試薬の購入に充てる。 骨粗鬆症病態モデルである卵巣摘出マウスに関しても同様に解析に必要な消耗品の購入を予定している。 これらに伴い、実験に用いるマウスの飼育数、飼育期間も増加することになるので、マウス飼育費用に充てる予定である。
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