研究課題/領域番号 |
20K18464
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
鯨岡 聡子 昭和大学, 歯学部, 助教 (90824673)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オルガノイド / 唾液腺オルガノイド / 自己免疫疾患 / シェーグレン症候群 / PD-1/PD-L1 / NODマウス / 唾液腺組織障害 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、シェーグレン症候群(以下、SS)における腺組織障害の抑制に免疫チェックポイント分子Programmed Death-1(以下、PD-1)/PD-L1の発現制御は有効であるかを解明することにある。自己免疫疾患であるSSは、遺伝的背景や環境要因が関与する多因子疾患であると考えられているが、その発症メカニズムの詳細は未だ不明な点が多い。このため、現在のSSの治療法は人工唾液や唾液分泌促進薬などの対処療法が主体であり、根治療法の開発が急務である。本研究では、申請者の所属研究室で報告した唾液腺オルガノイド培養システムを応用し、SS様の病態を示すモデルマウスであるNon-Obese Diabetic Mouse(以下、NODマウス)からiPS細胞を作出し、唾液腺オルガノイドを誘導することでSSモデル唾液腺オルガノイドを作出する。 2020年度はNODマウスないし野生型マウスの線維芽細胞にレトロウイルスを用いてOct3/4、c-Myc、Sox2、Klf4を遺伝子導入し、iPS細胞へのリプログラミングを行った。野生型マウスiPS細胞はフィーダー細胞上でES細胞様のコロニーを形成した。遺伝子発現解析の結果、樹立したマウスiPS細胞は未分化マーカーであるNanog、Oct3/4の発現を認め、iPS細胞が樹立されたと考えられる。 2021年度は、前年度に樹立したNODマウス由来iPS細胞および野生型マウスiPS細胞から唾液腺オルガノイドを誘導することを目標としていた。NODマウス由来iPS細胞からトランスポザーゼ発現プラスミド(pCMV-hyPBase)を安定発現する細胞株を樹立し、更に、piggyBacシステムを応用し(PB-TAC-ERN)、Dox誘導性にPD-L1を高発現できる細胞クローンの樹立を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はNODマウス由来iPS細胞の樹立を行った。はじめにNODマウスないし対照群として野生型マウスの尾部より採取した線維芽細胞に、レトロウイルスベクターを用いて4遺伝子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)を導入した。その後にES細胞用培地と交換し、20日培養することでiPS細胞を樹立した。樹立されたiPS細胞に対しては未分化マーカー遺伝子(Nanog、Oct3/4)の発現を検討することで、未分化性の確認を行った。2021年度は2020年度に樹立したNODマウス由来iPS細胞および野生型マウスiPS細胞から唾液腺オルガノイドを誘導する予定であったが、フィーダー細胞を用いて維持培養を行っているマウスiPS細胞から唾液腺分化誘導プロトコルを行うと、初期の細胞凝集塊の形成効率がフィーダー細胞無しで維持培養したマウスES細胞に比べて低いことが明らかとなったため、マウスiPS細胞のフィーダーフリー化、およびフィーダー除去の条件について検討を行った。しかしながら、効率良い唾液腺への分化誘導方法と遺伝子改変方法については現在検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
マウスiPS細胞のフィーダーフリー化、およびフィーダー除去の条件について検討後、2020年度に樹立したNODマウス由来iPS細胞および野生型マウスiPS細胞から唾液腺オルガノイドを誘導する予定である。SFEBq法を応用して唾液腺発生段階をin vitroで再現することでiPS細胞由来唾液腺オルガノイドを作出する。作出されたオルガノイドについて、遺伝子発現解析および組織学的な解析を行う。また、NODマウス由来iPS細胞に対してPD-L1遺伝子の導入を行う。PD-L1遺伝子の導入はpiggyBack vectorを用いて行う予定であり、ベクターを準備している段階である。このベクターはDoxycycline存在下で挿入遺伝子を発現する。この唾液腺オルガノイドをNODマウスの耳下腺切除部位へ同所性移植し、PD-L1を10週間発現させた後、唾液腺のCD4陽性T細胞浸潤ないし炎症性サイトカイン発現をPD-L1遺伝子非導入群と比較する。PD-L1の持続誘導はDoxycyclineの飲水投与により行う。唾液腺におけるCD4陽性T細胞の浸潤は免疫組織化学ないしFlow cytometryにて行い、炎症性サイトカイン発現はreal-time RT-PCRにて確認する。これらの結果から、PD-L1発現による唾液腺における炎症病態改善の有無を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の研究においてフィーダー細胞を用いて維持培養を行っているマウスiPS細胞から唾液腺分化誘導プロトコルを行うと、初期の細胞凝集塊の形成効率がフィーダー細胞無しで維持培養したマウスES細胞に比べて低いことが明らかとなったため、2021年度ではマウスiPS細胞のフィーダーフリー化および、フィーダー除去の条件について検討を行い、現在も検討中である。当初の計画では、2020年度内にiPS細胞に遺伝子導入を行う予定であったため、そのための遺伝子導入関連の試薬費用が次年度使用となった。
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