研究課題/領域番号 |
20K18465
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
畔津 佑季 昭和大学, 歯学部, 助教 (00812190)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | メダカ / 骨代謝 / グルココルチコイド / in vivoイメージング / 破骨細胞 / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
グルココルチコイド(GC)は副腎皮質から産生されるステロイドホルモンの1つである。その薬理学的な作用からGCの合成製剤は炎症・自己免疫疾患の治療薬として有用であるが、長期間のGC治療は副作用として骨代謝に悪影響を及ぼす。また歯の発生や恒常性維持への関与も示唆されているためこれらの機序解明は重要課題であるが、骨や歯の恒常性維持とGCとの関連性には不明な点が多い。 メダカは身体の透明度が高く、生きたまま顕微鏡下で骨や細胞を観察することができる (Chatani et al., Dev Biol 2011)。メダカには2種類のGC受容体(GR1とGR2)があり、その中でもGR2はメダカの主要なGCシグナルを担うとされている。申請者らは人工RNA (CRISPR-Cas9)を用いたゲノム編集技術で全身性GR2遺伝子欠損メダカを作製し、その尾ヒレを骨折させたところ、骨修復のために動員されてくる破骨細胞と骨芽細胞が野生型メダカよりも増加することを明らかにした (Azetsu et al., Biomed Pharmacother 2019)。これはGR2が破骨細胞と骨芽細胞の動態に関与することを示唆しているが、骨代謝に対する内在性GCの生理的役割を理解するにはGCシグナルを完全に遮断することが望ましい。 本研究では申請者らが新たに作製した全身性GCシグナル関連遺伝子欠損メダカを全身性GR2遺伝子欠損メダカと掛け合わせ、そのメダカの骨形態を解析したところ一部の骨で形態が変化することがわかった。またGCシグナルを阻害する薬剤の投与実験も行った。現在、GCシグナル下流の遺伝子発現量を確認しながら投与間隔や濃度などの条件検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全身性GCシグナル関連遺伝子欠損メダカと全身性GR2遺伝子欠損メダカの掛け合わせから、一部の骨においてGCシグナルが骨形態に影響を及ぼすという新たな知見を得た。また別の全身性GCシグナル関連遺伝子欠損メダカも作製している。今後このメダカと骨の細胞で特異的に蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変メダカとを掛け合わせ骨の生体イメージング解析を行うことで、骨代謝や骨形態、細胞動態に対するGCシグナルのより詳細な機能が明らかになると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
骨の細胞で特異的に蛍光タンパク質を発現する全身性GCシグナル関連遺伝子欠損メダカを用いて骨や歯を形態解析や遺伝子発現解析を行う。また全身性GR2遺伝子欠損メダカとの掛け合わせや、GCシグナルを阻害する薬剤の投与実験を行うことでGCシグナルを遮断したメダカモデルを作製する。
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次年度使用額が生じた理由 |
作製した遺伝子改変メダカから新たな知見が得られたため、この結果を元に次年度は遺伝子改変メダカのタンパク質・mRNA局在解析をより多角的に検討すべく追加で様々な抗体を購入したいと考えている。
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