研究課題/領域番号 |
20K18467
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
菊田 純 日本大学, 松戸歯学部, 専修医 (10759632)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 矯正治療 / 歯根吸収 / Hedgehogシグナル / Notchシグナル / Wntシグナル / TGF-βシグナル |
研究実績の概要 |
矯正治療による歯根吸収の発生には歯根膜における炎症性サイトカインの発現が関与しており、Notch、Wnt、TGF-βシグナル伝達がそれらのサイトカインの発現を制御していることが明らかになっている。また、近年の研究でHedgehogシグナルが骨形成に深く関与し、Sonic Hedgehog (SHH) が顎骨における破骨細胞形成を促進させることが示唆されている。このことより、矯正学的歯の移動時に生じる歯根吸収の発生にはNotch、Wnt、TGF-βシグナル伝達のみならず、Hedgehogシグナル伝達が関与している可能性が考えられる。そこで本研究では、歯根膜細胞と破歯前駆細胞におけるシグナル伝達経路間のクロストークに焦点を当て、矯正治療における歯根吸収メカニズムについて検討した。 In vivoにおいて、ラットの臼歯を50gの矯正力にて牽引し、当該部の切片は免疫組織科学染色を行った。In vitroでは、ヒト歯根膜細胞(hPDL cells)に至適矯正力モデルとして1.0g/cm2、強い矯正力モデルとして4.0g/cm2の荷重 (compression forces : CF)を作用させ、CF群とし、遺伝子・タンパク発現量を検討した。 In vivoでは矯正力を加えたラットの圧迫側歯根膜にはJagged1、Wnt5a、TGF-β1、SHH、RANKL、IL-6陽性細胞の増加が認められた。In vitroではhPDL cellsにおいて、CF4g群ではJagged1、Wnt5a、TGF-β1、SHH、RANKL、IL-6のmRNAの遺伝子発現の増加が認められた。このことから、矯正学的歯の移動時における歯根吸収にHedgehogシグナル伝達が関与していることが示唆され、Notchシグナル伝達、Wntシグナル伝達、TGF-βシグナル伝達が相互に関与している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度の計画では、in vitroでヒト歯根膜細胞を用いた圧迫側モデルにて、歯根膜細胞(PDL cells)におけるNotchシグナル関連遺伝子、Wntシグナル関連遺伝子、TGF-βシグナル関連遺伝、Hedgehogシグナル関連遺伝子及びの発現を検討すること、それぞれのシグナル伝達の阻害剤を培地に添加し、歯根吸収阻害実験を行う予定であった。圧迫側モデルにおいて、強い矯正力を負荷した際に炎症性サイトカインが生じることを確認し、Notchシグナル関連遺伝子、Wntシグナル関連遺伝子、TGF-βシグナル関連遺伝子、及びHedgehogシグナル関連遺伝子の発現を検討することまではできた。しかし、予定していたタンパク発現量の検討、シグナル伝達阻害実験までは達成できなかった。 In vivoにおいては、ラットによる実験的歯牙移動モデルを用い、歯根吸収を発生させたのち免疫組織化学染色にて、Jagged1、Wnt5a、TGF-β1、SHH陽性細胞の増加を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度では令和3年度に遂行できなかったin vivoでの遺伝子knock outマウスを用いた実験的歯根吸収モデルにて歯根膜細胞(PDL cells)における各シグナル伝達関連遺伝子を検討する。 次にin vitroでは、ヒト歯根膜細胞(hPDL cells)における圧迫側モデルを用い、各シグナル遺伝子の阻害剤を添加し、各シグナル経路間のクロストークを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れにより、in vivoでの遺伝子knock outマウスを用いた実験的歯根吸収モデルを使用した実験、in vitroでは、ヒト歯根膜細胞(hPDL cells)における圧迫側モデルを用いたシグナル阻害実験が出来ず、そのための材料の購入の費用が次年度に繰り越された。 次年度は遺伝子knock outマウス及び各シグナル遺伝子の阻害剤、各シグナルのタンパク発現を検討するためのELISA kit購入に充てる。
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