研究課題/領域番号 |
20K18468
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
山下 厚子 日本女子大学, 家政学部, 助教 (50848075)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有郭乳頭 / 味孔 / 味微絨毛 / マイクロリッジ / 味細胞 |
研究実績の概要 |
出生前から生後にかけての味孔やそこから突出する微絨毛の立体構造の変化を観察することを目的に、胎生18日、生後0日、3日、6日、28日、56日のマウス有郭乳頭(CVP)を採取し、CVPの側面を観察するために矢状断して走査電子顕微鏡で観察した。観察によって得られた画像から、CVPの大きさとその表面で観察された孔の最大径を推定し、さらに孔の開口部周辺の上皮と孔から突出した微絨毛の構造の変化も調べた。CVPの大きさは、成長とともに直線的な増加を示した。孔開口部周辺の上皮は微小突起を形成するように変化しており、CVPの発達過程における特徴的なパターンを示していた。さらに孔の開口部の大きさは、年齢が上がるにつれて大きくなり、上皮溝の基部では、微絨毛が突出した孔の数が増加していることが観察された。孔の大きさとCVPの大きさの増加の間には、有意な正の相関が認められた。これらの結果より、CVPの側方領域の拡大はE18からP56までの発育段階と相関があることが示された。また、成獣マウスの孔の開口部の周囲には明瞭な細胞縁が見られ、太さの異なる少なくとも2種類の微絨毛が確認された。さらに、微絨毛の表面全体に多数の微粒子が付着した状態のものと、何も付着していないものが観察され、受容体依存的に微絨毛に選択的に結合している可能性が考えられるが、微絨毛に付着した粒子を分析するためには、さらなる研究が必要である。 以上の結果をまとめ、第45回分子生物学会にてポスター発表を行った。また、論文としてまとめて投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度や脂味溶液をマウス口腔内に投与し、味覚認知に関連する脳の領域のc-Fos発現の解析と脂味の受容体であるGPR120とCD36の発現時期をPCRとウェスタンブロッティングにて解析を試みたが、いずれも最適条件の検討に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
脂味の認知開始時期の同定を優先課題とし、脂味溶液をマウス口腔内に投与し、味覚認知に関連する脳の領域のc-Fos発現の解析に取り組む。成獣マウスで実験条件を最適化した後は、離乳期、新生仔期、胎仔期と発達段階を変えて比較解析する。。 行動学的解析と平行し、脂味の認知開始メカニズムの解析を行う。まず、脂味の受容体であるGPR120とCD36の発現時期をPCRとウェスタンブロッティングで解析を進める。また、味覚認知に影響があることが先行研究で示唆されていることから、味覚受容体の発現場所を免疫抗体染色やin situ hybridization法で解析を進める。局在については局在を解除して脂味の認知に影響が生じるかについても、マウスのリッキングテストで確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は主に脂味刺激後の脳のcFos発現解析およびPCRとウェスタンブロッティングによる脂味受容体CD36とGPR120発現解析を行ったが、条件検討でとどまり、本実験まで至らなかったため、使用額に差が生じた。2023年度はこれらの実験条件の精度を高め、繰越金は本実験に使用する。また、これまでの結果を論文にまとめているため、繰越金は英文校正や論文投稿料に使用する予定である。
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