研究課題/領域番号 |
20K18468
|
研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
山下 厚子 日本女子大学, 家政学部, 助教 (50848075)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | Circumvallate papilla / Taste pore / Microridges / Taste microvilli / Taste cells |
研究実績の概要 |
2023年度はこれまでの実験を論文としてまとめ、発表することを優先して行った。結果は「日本味と匂学会第57回大会」にてポスター発表を行い、以下の論文にまとめた。 Yamashita A, Ota MS. A quantitative study of the development of taste pores in mice. J Oral Biosci. 2024;66(1):241-248. doi:10.1016/j.job.2024.01.013 この実験は、マウスの胎仔期・新生仔から成獣期に至るまで、味孔と微絨毛の3次元構造の変化を観察することで、味蕾の初期発生を明らかにすることを目的に行った。マウス有郭乳頭(CVP)組織の断片を、胚(E)18日目および生後(P)0、3、6、7、14、21、28、56日目に採取し、CVPの右側の溝に沿って前後方向に切断し、口腔側からCVPの溝の基底部側まで全表面を露出させ、走査電子顕微鏡で観察した。 CVPの表面には孔の開口が観察され、記録された画像からCVPのサイズと孔の最大径が推定された。同様に、孔開口部周辺の上皮の構造の変化と、孔から突出した微絨毛についても調べた。その結果、CVPの大きさはE18からP56まで年齢とともに直線的な増加を示した。孔開口部周囲の上皮は微小突起を形成するように変化しており、CVP発生時の特徴的なパターンを示した。また、孔最大径もE18からP56まで年齢とともに増加した。さらに、溝の基部では、突出した微絨毛を持つ孔の数が増加した。孔の最大径とCVPの大きさの間には有意な正の相関が観察された。CVPの側面画像における拡大は、E18からP56までの発育段階と関連しており、このことから、CVPの成長が微小絨毛突起を持つ味孔の開口と拡大につながることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの結果を論文としてまとめるにあたり、査読者から求められた追加実験やその結果の取りまとめを優先して行ったため、2023年度に行う予定であったc-fosを用いた脂味開始時期の同定や脂味の受容体の発現解析が進まなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
脂味の認知開始時期の同定を優先課題とし、脂味溶液をマウス口腔内に投与し、味覚認知に関連する脳の領域のc-Fos発現の解析に取り組む。成獣マウスで実験条件を最適化した後は、離乳期、新生仔期、胎仔期と発達段階を変えて比較解析する。 行動学的解析と平行し、脂味の認知開始メカニズムの解析を行う。まず、脂味の受容体であるGPR120とCD36の発現時期をPCRとウェスタンブロッティングで解析を進める。また、苦味受容体の発現場所が苦味認知に影響があることが先行研究で示唆されていることから、脂味受容体の発現場所についても免疫抗体染色やin situ hybridization法で解析を進める。受容体の発現局在は、その局在を解除したときに脂味の認知に影響が生じるかについて、マウスのリッキングテストで確認する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2023年度の支出は、これまでの実験結果を論文としてまとめるたのに英文校正や追加実験に必要な消耗品に留まった。論文の投稿費はオープンアクセスにしなかったので、費用がかからなかった。 2024年度は進捗が遅れている脂味の認知開始時期の同定に関する実験を行うので、その試薬や実験動物に使用する予定である。
|