研究課題
化膿レンサ球菌は致死性の高い劇症型レンサ球菌感染症を引き起こす。本疾患において、化膿レンサ球菌の侵入は、半数以上が皮膚や咽頭などの軟部組織感染症より生じると言われている。皮膚表面は糖質が少ないため、化膿レンサ球菌の生存に適した環境ではない。その一方で、化膿レンサ球菌は糖質が少ない培養環境で、アミノ酸代謝の中でも特にアルギニン代謝を更新させることが報告されてきたが、アルギニン代謝と病原性の関連性は不明な点が多く残されていた。そこで、合成培地を作製し、化膿レンサ球菌のアルギニン代謝が菌の遺伝子発現および病原性に与える影響を検討した。その結果、糖質を利用できない環境で、化膿レンサ球菌がアルギニンを代謝して溶血毒素などの発現を上昇させ、病原性を発揮することが明らかとなった。次に、マウスの皮膚表面感染モデルを用いてアルギニン代謝が菌の病原性に果たす役割を検討した。その結果、角層細胞を構成する主要なタンパク質であるフィラグリンの分解産物であるアルギニンを利用して、菌が皮膚病変を形成していることが示された。化膿レンサ球菌は菌体表層に豊富に存在するM タンパク質の配列の多様性に応じて、200種類以上の型に分類される。M1型株のMタンパク質は宿主細胞への接着や免疫回避に寄与することが報告されている。しかし、近年、分離頻度が上昇しているM87型株におけるMタンパク質 (以下M87タンパク質 )の性質は不明である。そこで、M87タンパク質欠失株を作成し、病原性への関与を検討した。その結果、M87タンパク質が好中球および全血による殺菌活性に対する抵抗性に寄与すること、及びマクロファージからの成熟型IL-1βの放出を促進することを明らかにした。
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