研究課題/領域番号 |
20K18476
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中村 庸輝 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (60711786)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 三叉神経ニューロパチー / HMGB1 / 中和抗体 / 慢性疼痛 / ミクログリア / マクロファージ |
研究実績の概要 |
三叉神経ニューロパチーは、親知らずの抜歯時などに三叉神経末梢枝を傷害することにより生じ、既存の治療法では奏功しない難治性の感覚異常である。本病態に対する新規治療方法・治療薬の開発は喫緊の課題であるが、慢性・難治化には複雑な病態が関与するため困難を極めている。一方で、本病態の特徴として、術前の検査等から、その発症リスクの予測が可能であり、そのリスクが高い患者に術前より治療介入することが可能である。そこで、本研究課題は、三叉神経ニューロパチーの発症機構の分子メカニズムの解明から、本病態の予防法の確立を目的として各種検討を行う。その結果、アラーミン/damage-associated molecular patterns (DAMPs) の一種である high mobility group box 1 (HMGB1) に対する中和抗体の予防的処置が、三叉神経ニューロパチーモデルである遠位眼窩下神経損傷 (dIoN-CCI) マウスにおいてみられる感覚異常様行動 (顔面毛繕い時間の延長、冷刺激に対する過敏化) を有意に抑制した。さらに、本抗体の投与は、損傷三叉神経周囲のマクロファージの集積や三叉神経脊髄路尾側亜核におけるミクログリアの異常活性化も有意に抑制し、組織中の炎症応答を抑制する可能性が示唆された。また、本抗体の予防的処置は雌雄両マウスにおいて、有効である可能性も認められた。以上より、HMGB1 が本病態の発症に重要であり、この HMGB1 機能を抑制することにより、疼痛様行動の発症及び病理組織学的変化を抑制できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、三叉神経ニューロパチーの発症に重要な アラーミン/DAMPs として HMGB1 を同定した。また、現在、薬理学的手法を用いて HMGB1 が作用する受容体の特定にも着手している。 さらに、化学遺伝学的手法 (DREADD: Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs) に使用するプラスミドベクターを準備し、現在 AAV ウイルスの作製も順調であり、次年度の実験計画もスムーズに進行できるものと想定している。
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今後の研究の推進方策 |
本病態を観察するための疼痛様行動として、マウスの顔面毛繕い時間、アセトン刺激に対する反応時間の計測を採用しており、実験手技者がビデオ動画から直接計測している。しかしながら、実験手技者間の計測の差異や、解析に多くの時間を費やすことが課題である。そこで、ディープラーニングを用いた動画解析ソフトの導入し、上記の課題の解消を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が順調に遂行でき、各種物品の購入の節約に繋がったため、その差額が生じたと考える。また、繰り越した研究費は次年度の試薬の購入に使用する計画である。
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