研究課題
遠位眼窩下神経を絹糸により絞扼することで三叉神経ニューロパチーモデル (dIoN-CCI) マウスを作製した。その結果、顔面を毛繕いする時間、アセトンを用いた冷刺激に対する反応性が有意に増加し、疼痛様行動が惹起されていることが明らかとなった。また、本病態モデルにおける脊髄路核腹側亜核 (Sp5C) のミクログリア体積が増大し、本細胞の活性化も確認された。次に、アラーミン/damage-associated molecular patterns (DAMPs) の一種である high mobility group box-1 (HMGB1) の本病態に発症に対する寄与を検討するために、 HMGB1 に対する中和抗体を神経損傷直前より予防的に処置した。その結果、上記の顔面領域における疼痛様行動と Sp5C におけるミクログリアの活性化は有意に抑制され、病態初期に HMGB1 機能を抑制することにより、三叉神経ニューロパチーの発症が予防できることが示された。これまでに HMGB1 は、Toll 様受容体 4 (TLR4) や 最終糖化産物の受容体 (RAGE) を活性化し、炎症を誘発することが報告されている。そこで、これらの受容体阻害薬を神経損傷直前に処置した結果、RAGE 阻害薬は三叉神経ニューロパチーの発症を有意に予防した。一方で、TLR4 受容体阻害薬では、統計学的に有意な予防効果を観察されなかった。従って、HMGB1 は RAGE の活性化を介して、本病態の発症を誘導することが明らかとなった。以上より、三叉神経を損傷する可能性が高い術式が必要な患者に対して、HMGB1 中和抗体や RAGE 阻害薬の前処置が本病態の発症を抑制する可能性が示唆された。
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https://pha.hiroshima-u.ac.jp/
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https://publons.com/researcher/2197743/yoki-nakamura/