研究課題/領域番号 |
20K18477
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安藤 俊範 広島大学, 病院(歯), 助教 (40754552)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Hippo経路 / 受容体型チロシンキナーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では、Hippo経路を制御する新たな受容体型チロシンキナーゼを見つけ出すとともに、頭頸部扁平上皮癌の治療として新規の分子標的薬を見出すことを目的としている。令和3年度では、令和2年度の実験において絞り込んだ受容体型チロシンキナーゼのin vitroでの詳細な解析を行った。この受容体型チロシンキナーゼの阻害薬は頭頸部扁平上皮癌細胞株において、YAPのリン酸化(S127)の亢進とYAP標的遺伝子群であるCTGF, CYR61の抑制を示し、YAP/TAZを抑制することで細胞増殖を抑えることが明らかになった。DEPMAP(多数の癌細胞株の増殖・生存や薬剤反応性に関わる遺伝子発現をまとめたデータベース)の解析により、この受容体型チロシンキナーゼ阻害薬の耐性に関わる遺伝子としてYAPやYAP標的遺伝子群が含まれていた。また、頭頸部扁平上皮癌でこの受容体型チロシンキナーゼが高発現する場合、EGFRと結合してヘテロ二量体を形成し、EGFRがMOB1を経由してYAPを活性化する経路(申請者が2021年にCommunications Biologyに報告)を増強することでYAP/TAZを制御していることが明らかになった。さらに、この受容体型チロシンキナーゼ阻害薬はEGFR阻害薬と併用することで相乗的に増殖を抑制し、CRISPR/Cas9システムを用いたLATS1/2ノックアウト(YAP/TAZの最活性化状態を誘導)により抑制効果が失われた。したがって、同定した受容体型チロシンキナーゼの阻害薬とEGFR阻害薬の併用の有効性と詳細な機序がin vitroの実験で明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同定した受容体型チロシンキナーゼがEGFRを介してHippo経路構成要素であるMOB1のチロシンリン酸化およびYAP/TAZの活性化を導く機構が明らかになり、in vitroでの解析が概ね進んでいる。よって当初の予定通り順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
同定した受容体型チロシンキナーゼのin vitroでの解析として、この受容体型チロシンキナーゼを高発現するとともにEGFR活性化変異を有する肺腺癌細胞での解析を行う。さらにこの受容体型チロシンキナーゼの阻害薬の効果を、ヌードマウスへのxenograftによるin vivoマウスモデルにて検討する。結果をまとめて国内外の学会発表を行い、論文にまとめて投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額がごくわずかであったため、無理に物品費として使用しなかった。翌年度の物品費に当てる予定である。
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