本研究では、Hippo経路を制御する新たな受容体型チロシンキナーゼを見つけ出すとともに、頭頸部扁平上皮癌の治療として新規の分子標的薬を見出すことを目的としている。令和4年度は、令和3年度の頭頸部扁平上皮癌の実験で同定した受容体型チロシンキナーゼの阻害薬とEGFR阻害薬の併用の有効性と詳細な機序を、肺腺癌にも応用して解析した。肺腺癌ではEGFRの活性化遺伝子変異が50%入っており、EGFR阻害薬が臨床で用いられており、同じく耐性が問題となっている。そこで4種類の肺腺癌細胞株で同定した受容体型チロシンキナーゼの発現を解析したところ、PC9細胞が高い発現を示した。そこでPC9細胞においても、同定した受容体型チロシンキナーゼに対する阻害薬がYAPを不活性化し、EGFR-LATS1/2経路を介していることを示した。そして受容体型チロシンキナーゼに対する阻害薬とEGFR阻害薬を併用することで、EGFR阻害薬への耐性を解除できることを見出した。従って研究機関全体を通して、頭頸部扁平上皮癌および肺腺癌において、同定した受容体型チロシンキナーゼがEGFRとヘテロ二量体を形成してEGFR-LATS1/2経路を介してYAPを活性化させており、EGFR阻害薬への耐性を付与することを明らかにした。今後、同定した受容体型チロシンキナーゼを指標としたprecision medicineへの展開が期待される成果を得た。
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