研究課題/領域番号 |
20K18478
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂本 真一 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (60848084)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Porphyromonas gingivalis / NASH関連肝癌 / AKT |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(Nonalcoholic Steatohepatitis; NASH)はメタボリックシンドロームの肝臓での表現型の1つである。申請者は学位研究で、歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis (P.g.)歯性感染が、高脂肪食誘導NASHマウスモデルの肝癌発生を促進し、感染群の背景肝では細胞増殖や細胞生存を制御するAKT発現が上昇する事を確認した。そこで本研究では、AKTを基盤とした発癌経路解析のため、次世代シークエンスを用いたマウス肝組織のトランスクリプトーム解析を行い、P.g.によるNASH関連肝癌発生促進メカニズムを解明するとともに、NASH 関連肝癌患者の肝組織を用い P.g.感染の有無によるAKTや関連タンパクの発現状況を比較し、NASH関連肝癌発生促進におけるP.g.感染によるAKT経路活性化の重要性を明らかにすることを目的としている。 学位研究時の実験にて、生後5週齢マウスにHFDを8週間投与し、P.g.を60週歯性感染させたHFD-P.g.(+)群とHFD-P.g.(-)群の肝臓を凍結保存している。初年度は、これらの凍結肝組織の背景肝を用いて、トランスクリプトーム解析 (mRNA 発現解析)を行い、その結果、複数のAKT 経路関連因子が変動している事を確認した。これらAKT経路関連因子の変動は、P.g. 歯性感染が高脂肪食誘導NASHマウスモデルの肝癌発生を促すという客観的な事実を裏付けるものであり、AKTを基軸とした複雑なシグナル伝達ネットワークを介した肝癌発生/進行メカニズムが存在することを示唆している。これらの関連因子を個別に解析し、発癌メカニズムを明らかにすることは、NASH関連肝癌の予防及び進行抑制において重要な役割を担っていると考えられる。また、NASH関連肝癌患者の手術材料の組織を用いて、免疫組織化学的にP.g. 感染の有無を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はトランスクリプトーム解析 (mRNA 発現解析) においてAKT経路関連因子の変動が明らかとなり、また、NASH関連肝癌患者のP.g.免疫染色が終了した。新型コロナウイルス感染症に伴う研究活動時間の制限があったため、関連因子の個別解析に着手できておらず、概ね順調としている。
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今後の研究の推進方策 |
トランスクリプトーム解析によるAKT経路関連因子の抽出により、複数のシグナル経路の活性化が予測される。動物レベルやヒトレベルでのP.g.感染の有無による関連因子の変動の解析やin vitroでの肝細胞単体における変化の検討が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症に伴う研究活動の時間的な減少に伴い、トランスクリプトーム解析で得られた個別の関連因子の変動を確認するための実験に遅れが生じたため。また、購入予定の試薬の海外からの納品も通常より遅延している。今後、各関連因子の解析に使用予定である。
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