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2020 年度 実施状況報告書

若年発症舌がんに対する臨床的特徴と遺伝学的背景に関する検討

研究課題

研究課題/領域番号 20K18491
研究機関公益財団法人がん研究会

研究代表者

大本 晃弘  公益財団法人がん研究会, 有明病院 総合腫瘍科, 医員 (50751632)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード若年発症舌癌 / 遺伝学的背景 / 再発メカニズムの解明
研究実績の概要

舌がんの一部は喫煙歴がなくヒトパピローマウイルス非感染の若年者に発症し、他の頭頸部がんとは異なる特有な生物学的特徴をもつ集団である可能性が示唆されている。しかしながらこの点に関する検討は世界的にもほとんど行われていない。
本研究では、過去15年間に40歳未満で舌癌と診断された107症例の臨床的特徴を解析した。発症年齢は20歳代が32例、30歳代が75例であった。臨床病期は0-II期が全体の64%を占めており、腫瘍組織の分化度は高分化型が75%であった。がんの既往歴、第一度近親者のがんの家族歴、1日あたり20本以上の喫煙歴を有する症例の割合は1%、20%、24%であり、40歳以上で診断された251例と比較したところ、その割合は各々有意に低かった。
全107例のうちの106例が根治を目指した外科的切除を受け、そのうち31%の症例(33例)が経過中に局所再発もしくは遠隔再発を来した。全107例の3年生存率は80%、外科切除を受けた106例の3年無再発生存率は71%であり、生存率、無再発生存率ともに進行例(III-IV期)で早期例(0-II期)よりも有意に予後不良であった。
家族歴のない症例においても生殖細胞系列変異が検出される可能性を否定できないが、家族歴、既往歴の情報からは若年発症例に関して遺伝学的な背景がさほど濃厚ではない可能性が示唆される。予後の点からは進行例では生存期間が不良であり、高い再発率がその一因と考えられる。遺伝子解析の観点からの再発メカニズムの解明が待たれる。現在再発例に関して初発時と再発時の腫瘍組織検体を用いて、全エクソーム解析によるゲノム情報の比較を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに40歳未満で発症した舌癌計107例を抽出し、40歳以上の非若年症例251例と臨床的特徴の比較を行った。ここでは既往歴、家族歴、嗜好歴(喫煙歴、飲酒歴)、予後(全生存期間、無再発生存期間)に関する臨床情報の収集を行った。若年発症例においては顕著な家族歴の集積が認められないことに加えて、進行期症例で、無再発生存期間、生存期間共に有意に予後不良であることを示した。再発をきたした約15症例に関して初発時・再発時の腫瘍組織、ならびに正常コントロールとして手術時のリンパ節組織標本からDNA抽出を行い、全エクソーム解析のためのライブラリー作成を行った。現在シーケンスが進行中である。

今後の研究の推進方策

全エクソーム解析の結果に基づいて、クローン進化の観点から再発のメカニズムを明らかにすると共に、治療標的となりうる遺伝子異常を有する症例を検索することを目標とする。
加えて、ヒトパピローマウイルス(HPV)をはじめとした発がんに関連するリスクファクターを明らかにする目的で、免疫染色によるp16タンパク発現の評価、PCRならびに in situ hybridizationを用いてHPV16、18型の検出を行う。一連の検討により喫煙・飲酒・HPVのいずれの関与も認めない症例を抽出し、若年者舌癌に特有な発症メカニズムの解明を目指す。

次年度使用額が生じた理由

主として昨年度解析を行っていない追加検体における全エクソン解析の経費、ならびにp16免疫染色、HPVのPCR、in situ hybridizationに関連する経費(抗体、染色キット等)として支出を予定している。

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公開日: 2021-12-27  

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