研究課題/領域番号 |
20K18494
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
黒澤 実愛 昭和大学, 歯学部, 助教 (70815802)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔乾燥症 / 免疫老化 / 細胞老化 |
研究実績の概要 |
ドライマウス患者は閉経期以降の女性に多いことが知られている。ヒトやマウスの胸腺は加齢とともに脂肪組織へと置き換わり、T細胞の老化が見られる。また、加齢変化に伴う細胞老化は免疫細胞だけでなく、唾液腺における腺房細胞にも影響する。しかし、これらの加齢変化が唾液腺への免疫細胞浸潤メカニズムは不明である。そのため、老齢マウスを用いて、細胞老化による唾液腺と免疫細胞の加齢変化を検討するとともに、加齢に伴うドライマウス発症のメカニズムを明らかにすることを目的とする。老齢マウス及びシェーグレン症候群モデルマウスでは、加齢とともに増加する老化関連T (SA-T)細胞が唾液腺で増加していた。SA-T細胞はB細胞欠損マウスでは増加しないことから、SA-T細胞の分化にはB細胞と胸腺の老化が必要である可能性がある。唾液腺や腸管粘膜固有層、二次リンパ組織のB細胞を比較すると、唾液腺では加齢特異的なB (ABC)細胞が若齢マウスでも増加する傾向を示した。 シェーグレン症候群モデルマウスの唾液腺では、老化マーカーであるSA-βGalの発現が導管周囲で増加していた。シェーグレン症候群患者やモデルマウスでは導管を介して口腔内細菌が唾液腺導管周囲に増加する事が報告されている。また、加齢に伴い細菌叢が変化する事から、口腔内細菌叢に着目し、無菌マウスでのB細胞を比較検討した。しかし、無菌マウスとコンベーショナル飼育マウスでは、唾液腺のABC細胞の割合は変化しない傾向を示した。また、口腔内細菌叢が乱れた状態(ディスバイオシス)を誘導されると、全身における自己免疫疾患等を促進する。そのため、ディスバイオシスの誘導のためにマウスの上顎臼歯を結紮処置すると、若齢マウスの唾液腺ではB細胞が増加したが、ABC細胞の割合は変化しない傾向を示した。そのため、若齢マウスにおける口腔内細菌は唾液腺のB細胞老化に関与しない可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
無菌マウスをビニールアイソレーター内で飼育しているため、スペースが限定さており、実験に必要な匹数が十分確保出来ない状態である。また、ビニールアイソレーターの故障などが起こっており、実験が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
ⅰ)口腔内細菌叢が老齢マウスにおける腺房細胞の細胞老化やB細胞の分化に与える影響を検討する。 ディスバイオシスの誘導は若齢マウスのみで実施しており、結紮処置後1週間と短い期間で検討を行っているため、B細胞や唾液腺の導管などに影響を与えたなかった可能性がある。そのため、週齢および結紮処置期間などを再検討し、口腔内細菌叢が唾液腺に与える影響を検討する。 ⅱ)エストロゲン低下によるSA-T細胞およびABC細胞に与える影響を検討する。 シェーグレン症候群は閉経以降の女性に多いことから、加齢とともにエストロゲンが関与している可能性がある。卵巣摘出によるエストロゲン低下は唾液腺樹状細胞に影響する事から、エストロゲンの低下によるSA-T細胞およびABC細胞への影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
設備の故障などによる実験の遅延。新型コロナウイルス感染防止の観点から、学会への参加が減り、旅費などが減少したため。 週齢を検討し直し、無菌マウス及び臼歯結紮処置マウスなどによる口腔内細菌叢と唾液腺の細胞および免疫細胞への影響を検討する。 次年度使用額が生じた分は、上記の実験に使用する消耗品などに使用する予定。
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