研究課題
慢性腎臓病は重症化すると人工透析を余儀なくされ、心血管疾患発症の大きなリスクとなる。国内患者数は現在1300万人を超え増加の一途をたどっている。近年、慢性腎臓病と歯周病との関連が指摘され、疾患進行の因果関係の予測が報告されているものの、メカニズムの解明はなされていない。また日本人を対象とした研究例はほとんどない。現在までに、末期腎不全により人工透析が必要となった患者において、唾液中の歯周病原細菌(Porphyromonas gingivalis)の菌数と、慢性炎症のマーカーであるTumor Necrosis Factor Receptor (TNFR) 1,2 に有意な相関があることを明らかにした。また、同じ集団におけるコホート研究より、口腔内の衛生状況が悪い人工透析患者は有意に生存率が低いことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
人工透析患者における臨床研究の結果を解析し、国際英文雑誌へ2本の論文を投稿した。これまでに得られているデータをさらに解析し論文化する目途が立っており、研究は概ね順調に進展していると考えられる。2020年度はCOVID-19の感染拡大により実験の遂行に制限があったが、2021年度感染状況を鑑みながら行う予定である。
今後、ヒトにおける臨床研究のデータ解析と並行して、糖尿病性腎症モデルマウスを用いて、歯周炎が腎臓の形態や機能に与える影響を検討する予定である。また、動物実験で得られた知見をもとにin vitroにて詳細なメカニズムを検討する予定である。
コロナウイルスの感染拡大により実験の遂行に制限があったため、予定より実験を行うことができず、予定使用額との差額が生じた。2021年度以降、感染状況を鑑みながら実験を遂行する予定であり、その際の費用とする予定である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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