研究課題/領域番号 |
20K18499
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
橋本 健太郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80825662)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HMGB1 |
研究実績の概要 |
歯髄炎は主にう蝕に継発して発症するが、う蝕に継発しない歯髄炎も存在する。咬合性外傷、矯正治療、バーといった歯科用機材による切削の後に発症する歯髄炎は、細菌感染ではなく物理的侵襲が原因と考えられているがその発症メカニズムはいまだ不明である。そこで、非細菌性侵襲による歯髄炎の発症メカニズムを探求する目的で、high mobility group box 1(HMGB1)とネクロプトーシスの関連について歯髄細胞を用いて観察した。ネクロプトーシスはアポトーシス、ネクローシスとは異なる制御された壊死であり、その際HMGB1の放出が誘導される。令和2年度においては、株化マウス歯髄細胞 (mouse dental papillae cells: MDPs)を37℃、52℃、75℃にて10分処理した細胞及び培養上清のHMGB1のタンパク質発現をwestern blottingにて検討した。さらにその培養上清を添加したMDPsのNF-kB p65のリン酸化をwestern Blottingにて検討した。その結果MDPsにおいて37℃では細胞内にのみHMGB1を認めたが、52℃, 75℃ではその培養上清中においてもHMGB1を認めた。MDPsの培養ディッシュへの接着能は、52℃および75℃処理で失われ、死滅していた。また52℃で処理した培養上清をMDPsに添加したところ、リン酸化NF-kB p65の発現の亢進が認められた。以上の結果より、歯髄組織が一時的であっても高熱にさらされると、HMGB1産生が誘導され、産生されたHMGB1がさらにNFkBのリン酸化を介して炎症性メディエーター産生を誘導している可能性が示唆された。今後熱処理でネクロプトーシスが誘導されるのか、ネクロプトーシスが炎症性メディエーター産生にどのようにかかわっているのかについて検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HMGB1の放出をさせるための条件を凍結融解や熱処理と見たことによって前提条件を安定させるために手間取ってしまった。さらに、コロナウイルス感染症の拡大に伴い、研究活動の停止、縮小があり、予定された研究の遂行が遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
HMGB1を添加しin vitroでNF-kB等のシグナル伝達等についてWestern Blottingを行っていく。また炎症性メディエーターの発現をまリアルタイムPCRで確認していく。またネクロプトーシスの検出をと蛍光免疫染色とWestern Blottingで確認していく。さらには実際に熱刺激などによる非感染性炎症をラットあるいはマウス歯髄に惹起し、HMGB1発 現を検討する。結果がまとまり次第学会にて発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の拡大に伴い、研究活動の縮小が余儀なくされ、予定された研究の遂行が不可能となってしまい、当初予定の研究計画経費が次年度へ移行してしまった。
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