細菌感染症である歯周病に対する補助的薬物療法としての既存のLDDS療法は、薬剤耐性菌の蔓延拡大や高齢社会におけるニーズの変化を受けて改善の必要に直面している。すなわち、より長期にわたり薬物が局所に停留し徐放性が維持され、かつ狭域スペクトルで安全性が高い、新規のLDDS製剤の開発が必要とされている。本研究は、コメ由来抗菌ペプチド含有バイオナノカプセルを開発し、既存の抗菌薬に代わる長期徐放型LDDS製剤としての機能を評価することを目指す。 機能性ペプチドのバイオナノカプセル化に関してこれまでに、単純水和法を用いてFITC-Dextran(10kDa)を封入したリポナノカプセルを製作し、物質の放出性・生体適合性・細胞親和性などLDDS製剤として必要な機能に関する評価をIn-vitroで行ってきた。位相差顕微鏡を用いてカプセルの形状・発光の様子を確認をすると共に、界面活性剤の添加によるカプセルの崩壊、封入物質の溶出を確認した。また、マイクロプレートリーダーにてFITCの溶出を検出することでコントロールとしての条件設定を行うと共に、細菌培養の条件下にて培地や温度条件が自然崩壊に与える影響についての検証を行った。 今回の実験より、保存液中でカプセルは48時間にて自然崩壊することを確認した。4℃と37℃の条件で比較することで、温度条件が崩壊に与える影響は少ないことを確認した。また、細菌培養用の培地中では早期にカプセルの崩壊を認めた。以上の結果から、リポナノカプセルは歯周病原細菌の培養条件下では早期に崩壊する可能性が示唆された。今後はポリマーチューニングにより、細菌培養条件下では崩壊せず、歯周病原細菌濃度に依存して崩壊を誘導できるような表面設計の調整を行っていく必要があると考える。
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