研究課題/領域番号 |
20K18506
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森本 千晶 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70806801)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 歯周病 / HIF-1 / コラーゲン |
研究実績の概要 |
本研究では、歯周病原因子・修飾因子がHIF(Hypoxia Inducible Factor)誘導性コラーゲン産生に及ぼす影響、HIF誘導性コラーゲンの制御が歯周病の病態形成に及ぼす影響について解明することを目的に研究を実施している。 令和2年度においては、in vitroにて、歯周病原因子・修飾因子がHIF誘導性コラーゲン産生に及ぼす影響に関して解析を行った。これまでにヒト歯肉線維芽細胞(HGF)を低酸素環境での培養によりコラーゲン合成に関与する水酸化酵素であるP4HA1とPLOD2の発現がHIF依存性に上昇することを明らかにしている。そこで、①歯周病原菌Porphyromonas gingivalis由来LPS、②炎症性サイトカインであるIL-1β、③タバコ由来物質であるニコチン、④歯肉増殖原因薬剤であるニフェジピンがHIF誘導性コラーゲン水酸化酵素の遺伝子発現に及ぼす影響について解析した。すなわち、①から④の存在、非存在下にて、酸素分圧の調節可能であるO2-CO2インキュベータで細胞を1%の酸素濃度条件下にて培養し、P4HA1、PLOD2発現についてreal-time PCR法にて検討した。その結果、①もしくは④の存在下においてはP4HA1、PLOD2の発現に変化を認めなかった。②の存在下において、P4HA1の発現が上昇傾向を示し、PLOD2の発現は有意に上昇した。さらに、③の存在下においてP4HA1、PLOD2の発現が共に有意に上昇した。 一方でin vivoにおいて、マウス絹糸結紮歯周病モデルを用いた歯周組織のP4HA1、PLOD2の発現検討を行った。マウス上顎第二臼歯に5-0絹糸を結紮し、結紮7日後の歯周組織におけるP4HA1、PLOD2のタンパク発現を免疫染色法にて解析したところ、非結紮側と結紮側の歯周組織において両分子の発現を認め、その発現に差異を認めなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯周病原因子・修飾因子であるIL-1βおよびニコチンがHIF誘導性コラーゲン水酸化酵素のP4HA1、PLOD2の遺伝子発現にを上昇させることが明らかになった。予定されていた実験はほぼ予定通りに遂行できたことから、研究はおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、令和2年度のin vitroにて明らかとなったIL-1βによるHIF-1誘導性PLOD2の発現上昇を、タンパクレベルにおいてもウエスタンブロッティング法にて解析し、さらにコラーゲン発現についての解析も加える。HIF誘導性P4HA1、PLOD2が各細胞の炎症反応に及ぼす影響の解析を行う。つまり、P4HA1、PLOD2発現抑制HGF、HPDLを20%あるいは1%酸素濃度下にて培養した際、IL-1βにて各細胞を刺激し、炎症メディエーターの発現をreal-time PCR法、ELISA法にて解析を行うことを予定している。 さらにin vivoにて歯牙結紮マウス歯周病モデルにおけるP4HA1、PLOD2遺伝子発現をin situ hybridizationにて解析する。また、両分子の歯周組織局所における発現がHIFの安定化あるいは機能阻害によって如何なる影響を受けるかについて検討を加える。すなわち、上記実験で用いる絹糸を結紮前にHIF-1α安定化試薬deferoxamineあるいはHIF機能阻害剤chetominに浸漬し、同様にP4HA1、PLOD2の発現を解析する。次に、HIF誘導性コラーゲンが上記マウスモデルの病態形成に及ぼす影響の検討を行う。in vivo transfection法によりP4HA1あるいはPLOD2のsiRNAを歯周組織局所に導入することにより両分子の歯周組織における発現を抑制したマウスを作製する。同マウスに上記と同様に絹糸結紮による歯周病を誘導した際の歯周組織破壊について検討する。歯槽骨吸収についてはμCTによる解析に加え、組織学的な解析をする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、学会がweb開催になり、旅費が必要なかったため。 次年度使用額は抗体等の実験試薬および消耗品等に使用する計画である。
|