本研究では、歯周病病原因子・修飾因子がHIF(Hypoxia Inducible Factor)誘導性コラーゲン産生に及ぼす影響およびHIF誘導性コラーゲンの制御が歯周病の病態形成に及ぼす影響について解明することを目的に研究を実施した。 これまでにヒト歯肉繊維芽細胞(HGF)を低酸素環境での培養により、コラーゲン合成に関与する水酸化酵素であるプロリルヒドロキシダーゼ(P4HA1)およびリシルヒドロキシダーゼ(PLOD2)の発現が、HIF依存性に上昇することを明らかにしている。また、令和2年度において、炎症性サイトカインであるIL-1βの存在下において、P4HA1の発現が上昇傾向を示し、PLOD2の発現が有意に上昇していることが明らかとなった。 そこで、令和3年度において、in vitroにてHIF誘導性P4HA1あるいはHIF誘導性PLOD2がHGFの炎症反応に及ぼす影響の解析を行った。すなわち、P4HA1あるいはPLOD2の発現を抑制したHGFを用いて、IL-1β存在・非存在下で培養した際のIL-6およびIL-8の遺伝子発現をreal-time PCR法にて解析し、同分子のタンパク発現をELISA法にて定量的な解析を行った。さらに、HGFにレンチウイルスを用いて、P4HA1あるいはPLOD2過剰発現させた細胞を作製した。同上分子の発現をウエスタンブロッティングにて確認した後、各細胞を、IL-1β存在・非存在下で培養した際のIL-6およびIL-8の遺伝子発現をreal-time PCR法にて解析し、同分子のタンパク発現をELISA法にて定量的に解析した。その結果、P4HA1の発現を抑制したHGFにおいて、IL-6およびIL-8の遺伝子発現、タンパク発現ともに、IL-1β存在下にて培養すると、IL-1β非存在下での培養と比較し、有意に上昇した。
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