研究課題/領域番号 |
20K18507
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大嶋 淳 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (30755450)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯学 / 微生物学 / 口腔細菌学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、根尖性および辺縁性歯周炎に対する新規の創薬・治療戦略の創成を念頭に、Porphyromonas gingivalisがインターフェロンシグナルを制御する機構について多角的な検討を行うことである。本年度はまず、P. gingivalis感染した活性化マクロファージの網羅的遺伝子発現解析と、インターフェロンシグナルの抑制に関わる細菌コンパートメントの同定、そしてP. gingivalisと他種細菌との混合感染による相互作用についての検討を行った。 インターフェロンで刺激したマクロファージにP. gingivalisを感染させRNAシークエンス解析を行ったところ、P. gingivalisはインターフェロンによって発現が誘導される多くの遺伝子の発現を制御しており、マクロファージの活性化を阻害することが示唆された。さらにリアルタイム定量PCRにて検討を加えたところ、P. gingivalis感染はインターフェロンシグナルに極めて重要な転写因子であるSTAT1の発現をmRNAレベルで強く阻害していることが明らかとなった。また、P. gingivalisによるSTAT1の発現抑制を指標としてトランスウェルを利用した非接触共培養法を用いて検討を行い、STAT1の発現抑制が細菌-宿主細胞間の直接接触を必要とすることを確認した。さらに、マクロファージをP. gingivalisと他の口腔内細菌とを同時に刺激した場合のSTAT1の発現についてもリアルタイム定量PCRを用いて検討したところ、他の歯周病原性細菌であるFusobacterium nucleatumやPrevotella intermediaの感染ではSTAT1の発現抑制が認められなかったものの、両細菌をP. gingivalisと共感染させた場合にはSTAT1の発現の有意な阻害効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
P. gingivalisがマクロファージにおいてインターフェロンシグナルを抑制する条件を確定することに成功し、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、P. gingivalisによるシグナル抑制が細菌-宿主細胞間の直接接触を必要とするという結果から、細胞の貪食や細胞内小胞輸送を特異的に阻害する試薬での処理を加えることで、抑制機構が細胞表面からの刺激によるものなのか、細菌の細胞内への侵入が必須なのかを明らかにする。P. gingivalisがもつインターフェロンシグナル抑制誘導因子の特性を絞り込んでいき、最終的にはその機能発現に関わる遺伝子の突然変異体菌株の作製・解析につなげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加を予定していた海外学会に参加しなかったため、学会参加費と旅費が不要であった。 次年度は現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。また,国内外の学会にも参加予定である。
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