研究課題/領域番号 |
20K18509
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中川 沙紀 岡山大学, 歯学部, 客員研究員 (60814522)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 抗炎症 / 骨粗鬆症 / terrein |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,申請者が研究している真菌由来低分子化合物terreinの破骨細胞分化抑制に着目し,炎症性骨破壊疾患治療薬への応用を検討することである。 8020運動達成率が50%を超え,高齢者の口腔内に残存する歯自体が感染源となり,炎症性骨破壊を主病態とする歯周炎の罹患率が上昇する新たな問題が生じている。そのため,安全・簡便に応用できる新たな治療方法の開発が求められる。申請者が研究しているterreinは抗菌・抗炎症作用を有する一方,極めて細胞毒性が低く,炎症性骨破壊の主要因子である破骨細胞の分化・機能を抑制して骨破壊を制御する効果を報告した。そこで本研究では,炎症性骨破壊疾患マウスモデル(歯周病および骨粗鬆症)を用いて,低分子化合物terreinの破骨細胞分化抑制機能を応用し,terreinの免疫細胞に対する作用を検証する。すなわち,terreinが副作用の少ない新たな炎症性骨破壊疾患治療薬として応用できる可能性を免疫学的視点から検討している。 本年度は,骨粗鬆症マウスモデルを用いて,terreinの投与が大腿骨成長板周囲骨破壊に及ぼす影響を検討した。その結果,terreinの投与は破骨細胞分化を有意に抑制し, 大腿骨の骨破壊を抑制する効果を確認した。また,terreinの作用メカニズムとしてRANKLシグナル系におけるPKC経路を抑制する可能性が示唆された。今後は,terreinの抗炎症薬理効果を解析するためにそのメカニズムをin vitroで発現遺伝子の変化を網羅的に検証していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた骨粗鬆症マウスモデルでの解析は概ね順調に進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,歯周炎マウスから絹糸結紮周囲歯周組織を,骨粗鬆症マウスからは大腿骨成長板周囲軟組織を採取し, Mizrajiらの方法(2013)を用いて細胞を分離する。そして,各種免疫担当細胞特異的表面マーカで染色後,Flow cytometryにて免疫細胞(好中球,マクロファージ(M1またはM2),CD4陽性IL-17A陽性Th17細胞等)の動態を解析する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大のため,参加を予定していた学会に参加できなかったため旅費の支出がなかったこと,また,研究代表者自身もコロナ感染拡大下での移動制限・入構制限のため,しばらく実験を進めることができない期間が生じた。引き続きコロナ感染拡大による移動制限が継続されることが予測されることから,次年度計上している旅費ならびに次年度使用額を予定している免疫細胞動態の解析研究に使用し,解析をさらに進める予定である。
|