研究課題
【本研究の目的】歯周炎による軽微な慢性炎症は、脂肪組織において脂肪細胞-マクロファージの相互作用で増幅され、インスリン抵抗性を惹起する。我々は、 LPS刺激下でマクロファージと共培養した脂肪細胞においてCCL19が高発現することを見出し、その受容体のCCR7欠損(KO)マウスでは、高脂肪食誘導性肥満とインスリン抵抗性が抑制されたことから、脂肪組織の炎症にCCL19-CCR7経路が重要であることを報告した。さて、microRNA(miRNA)は、標的遺伝子の発現を抑え炎症反応を調節することが知られている。本研究では、CCL19-CCR7経路によって制御されるmiRNAに着目し、肥満誘導性炎症を調節するmiRNA(治療標的)を探索した。【材料と方法】野生型(WT)およびCcr7-KOマウスに通常食(ND)または高脂肪食(HFD)を8週間与え、脂肪組織を採取した。miRNAアレイ解析を行い、その結果をqPCRで検証した。着目したmiRNAについて、LPS刺激下でマクロファージと共培養した脂肪細胞での発現解析を行った。また、LPS刺激マクロファージ、TNF-α刺激脂肪細胞についても解析した。【結果】WT/NDと比較しWT/HFDで発現が低下し、WT/HFDと比較しCcr7-KO/HFDで亢進するmiRNAとしてmmu-miR-Xを同定した。LPS刺激下でマクロファージと共培養した脂肪細胞やTNF-α刺激脂肪細胞では、それぞれ未刺激群と比較して有意にmiR-Xの発現は抑制された。一方、LPS刺激マクロファージでは、炎症反応は亢進したもののmiR-X発現は変動しなかった。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究で以下の結論を得ることができているため。脂肪組織で炎症反応を調節しているmiR-Xを同定し、この発現調節には、炎症組織中のマクロファージが産生するTNF-αが関与していることが示された。miR-Xは、炎症の制御に重要であり、歯周炎等の合併症として起こる肥満制御の治療標的となる可能性がある。
研究計画通りに、選定したmicroRNAについて脂肪組織炎症に与える影響を検討予定である。
コロナウイルス感染症流行により学会がすべてWeb開催となり、旅費が全く使われなかったため、本年度使用額が予定よりも少なくなった。今後、移動が可能となれば、成果発表に使用したい。
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BMJ Open Diabetes Research & Care
巻: 9 ページ: e001871~e001871
10.1136/bmjdrc-2020-001871
Case Reports in Dermatological Medicine
巻: 2021 ページ: 1~5
10.1155/2021/5548760