まず、炎症モデルとして高脂肪食を摂取させたマウスの脂肪組織を用い、microRNA発現をマイクロアレイで網羅的に解析した。炎症状態の脂肪組織で発現抑制したmicroRNAの中からmiR-582-5pに着目した。このmicroRNAはリアルタイムPCRでも炎症脂肪組織で発現抑制し、また骨髄由来マクロファージやRAW264.7マクロファージ様細胞をLPS刺激した際にも有意に発現抑制したことから、少なくともマクロファージでは炎症状態で発現抑制することが分かった。さらに、RAW264.7細胞にmiR-582-5pを導入しLPS刺激をすると、炎症性サイトカインTnf-α、IL-1b、IL-6は遺伝子レベルでもタンパク質レベルでも有意に発現抑制し、このmicroRNAの抗炎症効果が示された。 次に、この抗炎症メカニズムを解明するため、ターゲット予測サイトを用いmiR-582-5pの標的遺伝子探索を行い、Skp1に着目した。ルシフェラーゼアッセイによりSkp1とこのmicroRNAが結合することを確認し、またこのmicroRNAの導入によりSKP1発現が有意に抑制することから、Skp1はmiR-582-5pのターゲットであると言える。 SKP1は複合体を形成し、NF-kB経路においてIκBαの分解とp65のリン酸化を誘導するが、si-Skp1を用いてSkp1をノックダウンしたときだけでなく、miR-582-5pの導入によってもSkp1発現が下がり、IκBαの分解とp65のリン酸化、さらにはそれに続くp65の核内移行が抑制した。 以上、炎症状態ではmiR-582-5pの発現抑制や炎症性サイトカインの発現亢進が起こるが、このmicroRNAを導入するとターゲットであるSkp1に結合することで抗炎症作用を示す。よって、本研究成果は新たな核酸医薬の開発につながる可能性がある。
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