研究課題/領域番号 |
20K18513
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
新城 尊徳 九州大学, 歯学研究院, 助教 (20711394)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 糖尿病関連歯周炎 / 糖尿病 / インスリン作用 / インスリン抵抗性 / 肥満 / 血管内皮細胞 / 歯周炎 / VCAM-1 |
研究実績の概要 |
本年度は、in vitro実験でAkt下流分子のFoxO1に着目し、インスリンによる同分子のリン酸化が、血管内皮細胞でのLPSやTNFα誘導性VCAM1発現制御に関わるかを検討するとともに、in vivo実験においては、WTマウスに対してVEIRKOマウスで観察された歯槽骨吸収量の有意な増大に関わる歯周炎病態の変化を、歯肉におけるqPCRや免疫組織学的検討を行い評価した。 【in vitro実験】インスリンによってリン酸化を受ける3か所の残基を変異させ、FoxO1不活性化が起こらないようにした変異型FoxO1と、intact FoxO1を血管内皮細胞株TKD2に過剰発現させ、インスリン刺激を行ったところ、変異型FoxO1を過剰発現したTKD2ではインスリンによるAktおよびErkリン酸化は変化ないものの、FoxO1リン酸化が著しく減弱した。この条件でインスリンによるLPS/TNFα誘導性VCAM1発現制御をウェスタンブロット法で確認したところ、変異型FoxO1過剰発現TKD2細胞ではインスリンによる制御が喪失していた。一方、intact FoxO1過剰発現TKD2では、インスリンによるVCAM1の制御は変わらず観察されたが、LPSやTNFα刺激でのVCAM1発現レベルが増強されることはなかった。 【in vivo実験】VEIRKOマウスでは、結紮後の歯肉中の炎症性遺伝子やRanklの遺伝子発現がWTマウスよりも有意に亢進していた。また、絹糸結紮による歯槽骨周囲の破骨細胞形成はVEIRKOマウスで有意に亢進していた。さらに、絹糸結紮後のMPO陽性細胞の歯周組織への浸潤数は、VEIRKOマウスで有意に増加した。 これらの結果より、血管内皮細胞におけるインスリン抵抗性は、感染性炎症によるVCAM1発現制御が破綻し、白血球浸潤が増大することで歯周炎の増悪に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの世界的流行によって、共同研究先からのVEIRKOマウスの凍結胚の提供が半年程度遅れていたが、in vitro実験を大きく進めるとともに、in vivo実験についても精力的な検討によっておおむね予定通りの実験の実施まで追いついている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、歯周炎によって障害された歯周組織の回復にも、血管内皮細胞のインスリン作用が重要な役割を持つかどうかを、引き続きVEIRKOマウスを用いて検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、実験計画の実施に遅れが生じ、論文のリバイス実験が令和5年度にずれこんでいるため。
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