研究課題
マウス血管内皮細胞株TKD2に100nMインスリンを前処理することで、E.coli LPS・TNFα誘導性VCAM1発現が有意に抑制され、これにはPI3K-Akt経路が関与することが分かった。また、高血糖(25mM D-glucose)条件で48時間培養したTKD2細胞では、インスリン刺激によるAkt活性化の抑制が見られ、インスリン抵抗性が惹起されることを確認した。この条件では、インスリン前処理によるLPS・TNFα刺激によるVCAM1発現の抑制効果が減弱していた。一連のVCAM1発現誘導の結果と一致して、LPS・TNFα刺激時のヒト単球細胞株THP-1との細胞接着が増加し、インスリン前処理によって有意に低下した。高血糖処理下では、この細胞接着の制御が減弱していた。VEIRKOマウスとWTマウスの歯肉中のインスリン受容体の発現を確認したところ、VEIRKOマウスでは約50%発現が低下していた。それぞれのマウスの歯肉にex vivoでインスリン刺激をしたところ、VEIRKOマウスの歯肉ではAktリン酸化が有意に減弱していた。両マウスに絹糸結紮による実験的歯周炎を誘発すると、14日後のVEIRKOマウスにおける骨吸収はWTマウスよりも有意に亢進した。さらに、歯肉中の好中球浸潤はVEIRKOマウスでより多かった。インスリンによる炎症刺激誘導性VCAM1発現抑制に関わるAkt下流因子としてFoxO1に着目し、インスリン刺激時にリン酸化される3残基に変異を起こした変異型FoxO1と通常のFoxo1をTKD2細胞に過剰発現した。インスリン前処理によるLPS・TNFα誘導性VCAM1発現は通常FoxO1過剰発現により影響は受けなかったが、変異型FoxO1過剰発現によって抑制効果が打ち消された。以上の結果より、血管内皮細胞におけるインスリン抵抗性は歯周炎の増悪に寄与することが示された。
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