今年度においては、これまでに作成したNASHモデルマウスの実験的歯周炎群とコントロール群における肝臓組織の遺伝子発現およびタンパク質産生の解析を行った。 [これまでの研究結果] ①12週齢のNASHモデルマウスに絹糸を用いた実験的歯周炎群を惹起させたところ、第2大臼歯周囲歯槽骨が有意に減少した。また実験的歯周炎群とコントロール群の上顎骨の免疫染色を行ったところ、ANGTPL2が歯周炎局所において発現が増加していることがわかった。②実験的歯周炎群とコントロール群の体重および肝臓組織の重さに有意な差は認めなかった。次に実験的歯周炎群とコントロール群の肝臓組織の組織切片を作成したところ、実験的歯周炎群において脂肪化が進行し、炎症性細胞浸潤の増加を認めた。③実験的歯周炎群とコントロール群の肝臓組織をホモジナイズしRNA抽出を行い、qPCR法を用いて遺伝子解析を行ったところ、IL-6、TNF-α、ANGPTL2の遺伝子発現の増強を認めた。④実験的歯周炎群とコントロール群の血液を採取し、ELISA法にて血清成分のANGPTL2濃度を測定したところ、有意な差は認めなかった。 以上の結果より、NASHモデルマウスにおいて実験的歯周炎を惹起させたところ、肝臓組織において炎症が増悪し、NASH病態が増悪する可能性を見出した。そこで今後は実験的歯周炎群の歯周組織および肝臓組織において遺伝子発現が増加していたANGTPL2に着目し、メカニズムの詳細を明らかにしていく。
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