研究課題/領域番号 |
20K18521
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
大森 実知 大阪医科大学, 医学部, 助教 (60803137)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 口腔細菌叢 / IgA抗体 / 歯周病 / メタゲノム解析 |
研究実績の概要 |
糖尿病は歯周病と相互に関連することから,糖尿病患者の歯周病治療,口腔管理の重要性が認識されてきている。糖尿病患者の口腔細菌環境およびそれに対する応答性は健常者とは異なることが示唆されているがその詳細は明らかでない。近年の細菌叢研究の進展により,唾液細菌叢が歯周病および2型糖尿病と関連することが明らかになってきた。本研究は,2型糖尿病の歯周疾患患者の口腔細菌環境の特徴を評価,把握することを目的としている。 本年度は,高齢者の2型糖尿病患者の唾液細菌叢の特徴を評価した。 本学の大阪医科薬科大学病院糖尿病代謝内分泌内科において血糖コントロール目的で教育入院し,歯科口腔外科を紹介受診した血糖コントロール不良な2型糖尿病患者を対象とした。コントロールとして,本学で行われた高槻市民健康調査を受診した高齢者のうち,糖尿病でない人を対象とし,患者群と年齢および性別をマッチングさせて選択した。対象者から唾液サンプルを採取し,口腔内診査を行い,全身状態を確認した。採取した唾液サンプルを用いて,16Sメタゲノム解析を行い,唾液細菌叢の構成比率を患者群とコントロール群で比較解析した。その結果,高齢の2型糖尿病患者における唾液細菌叢の特徴が明らかになった。この結果について,論文作成,投稿中である。 さらに,同じサンプル中の細菌数および,口腔内の病原性の高いとされる特定細菌, Porphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatum,Streptococcus mutansなどの定量を行った。この結果については,現在解析段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,大阪医科薬科大学病院糖尿病代謝内分泌内科で教育入院している血糖コントロール不良な2型糖尿病患者を対象にしているが,コロナウイルス蔓延に伴い,緊急性が低い教育入院の延期によって歯科口腔外科への紹介が中断し,サンプル採取が行えない状態が続いていた。研究期間内に100検体を目標としており,今後再開していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2型糖尿病患者の試料採取および歯周病検査を引き続き実施していく。試料採取を継続しながら歯周病細菌の定量解析および口腔内IgA抗体応答性の解析を進める。歯周病細菌をはじめとする特異的な病原細菌の定量解析を行い,その結果と細菌叢の関連を評価する。また,口腔サンプル内のSIgA抗体の定量をELISA法で行い,細菌数や細菌叢とIgAの量との関連を評価する。これらの関連が,2型糖尿病患者とコントロール被験者でどのように影響しているかを解析する。 さらに,口腔内細菌のうち,IgA抗体と結合しているIgA結合細菌とIgA非結合細菌を分けた時の細菌叢を解析する。このための系は現段階でまだ確立できていない。唾液中の細菌数は便の細菌数と比較して少ないことが原因と考えられる。唾液のみでなくプラークも視野に入れ,IgA結合細菌の評価を行っていく予定である。 その後,得られた解析結果をもとに,2型糖尿病の歯周病患者に特徴的な口腔細菌の特徴を多面的に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では,大阪医科薬科大学病院糖尿病代謝内分泌内科で教育入院している血糖コントロール不良な2型糖尿病患者を対象にしているが,コロナウイルス蔓延に伴い,緊急性が低い入院の延期によって歯科口腔外科への紹介が中断している。計画していたサンプル数の採取が行えなかったため,研究実施が遅れ,次年度使用額が生じた。 現在は入院が再開し,サンプル採取も順次再開していく予定であり,試薬や次世代シークエンス解析費用等に使用する予定である。
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