研究課題
若手研究
本研究は,糖尿病患者の口腔細菌環境の特徴を,唾液中の細菌叢,さらに免疫グロブリンA (IgA) 抗体応答性に着目して明らかにすることを目的とした。その結果,糖尿病および前糖尿病の対象者の唾液細菌叢は健常者と異なること,およびその特徴を明らかにした。さらに唾液のIgA抗体応答性は細菌の種類によって異なり,細菌叢に影響を及ぼすこと,血糖状態と関連する可能性があることが示唆された。2型糖尿病患者の口腔管理において,唾液を利用した口腔細菌環境の診断,リスク評価のための基礎的データになると考える。
口腔微生物学,口腔免疫学
口腔細菌叢は,全身状態と関連することが近年明らかになってきている。口腔細菌叢を規定する要因の一つとして宿主の免疫応答性,なかでも口腔の IgA 抗体応答性が関連する可能性を明らかにしたことは,学術的意義がある。また,本研究結果は,糖尿病および前糖尿病の段階を唾液の細菌叢によってスクリーニングできる可能性を示唆している。世界的な高齢化の進行により,今後糖尿病患者の増加が予測されていること,早期の発見が糖尿病予後と関連することから,臨床的意義がある。