研究課題
糖尿病と歯周病との関係には、主にサイトカインや細菌のリポ多糖(LPS)といった炎症に関わる因子が関与していると考えられているが、臓器特異的な影響とその詳細なメカニズムは明らかになっていない。本研究では生体内での代謝において質・量共に重要な骨格筋に着目し、研究を行う。炎症と代謝の総合的な視点から得られる知見は、歯周病などの炎症性疾患と糖尿病などの代謝性疾患との関連について、新たな概念を提唱するものになり得ると考えられる。本研究では、歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg)の嚥下及び菌血症モデルマウスを作製し、骨格筋における糖代謝への影響を調査する。また動物実験の結果に基づいてPg由来LPSのマウス筋芽細胞株への作用を調査し、腸内細菌叢および遺伝子発現変動を網羅的に解析することで、代謝異常のメカニズムを解明する。さらには糖尿病患者における骨格筋脂肪化とPg 血清抗体価、唾液中のPgの量及び、総細菌数におけるPgの割合との関連を検討する。実施年度ではモデルマウスの作出を行い、合わせて糖負荷試験やインスリン抵抗性の評価を行なった。6週後に、マイクロX線CT撮影を行い、筋組織内脂肪、筋細胞内脂肪、筋細胞外脂肪、全身骨格筋指標を算出した。速筋(白筋)である前脛骨筋及び遅筋(赤筋)であるヒラメ筋を採取し、組織切片でOil Red O染色を行い脂肪の増加を評価した。またウエスタンブロットによりインスリンシグナルの阻害が起きていないかを評価し、さらに発現変動遺伝子の網羅的解析を行った。現在、免疫染色を試みているが染色がうまくいかず難航しており、次年度の課題となっている。また、ウエスタンプロットによる様々なシグナルの検討と、脂肪化が少ないことから評価する期間の延長を検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
マウス由来細胞株であるC2C12を用いた実験はすでに開始しており、概ね順調に進展している。
次年度は、免疫染色、ウエスタンプロットによる様々なシグナルの検討と、マウスの評価する期間の延長を検討する。マウス由来細胞株であるC2C12にPorphyromonas gingivalis 由来LPS刺激を行ったのち、ウエスタンブロッティング法によるインスリンシグナルの阻害が起きているか評価する。またLPS刺激により、マイクロアレイ解析で得られた発現変動遺伝子が影響を受けるかq-PCR法にて評価する。
当該年度では、十分な脂肪化が起きている観察期間でのマイクロアレイ解析を行うことができなかった。そのためさらなる解析の必要性があると考え次年度分として請求した。
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