令和3年度には、老化ヒト歯根膜細胞における、損傷ミトコンドリアの標識に重要なPINK1/Parkin経路のParkinをコードするPARK2遺伝子の発現低下を発見した。実際に、PARK2を老化歯根膜細胞に導入することにより、マイトファジーが部分的に賦活化されることを、共焦点イメージングなどにより確認した。さらに、micro RNA(miRNA)の網羅解析により、老化歯根膜細胞では老化と酸化ストレス応答に関与する、 miR-137やmiR-146、miR-181などのmiRNAが高発現していることが明らかとなった。実際にmiR-137、miR-181aの模倣合成オリゴ(mimic)を正常歯根膜細胞に導入することにより、それぞれの標的遺伝子であるFUNDC1、PARK2の発現減少が認められた。FUNDC1はマイトファジーへの関与が報告されており、正常歯根膜細胞にmiR-137、miR-181aのmimicを導入することにより細胞内活性酸素種(ROS)の蓄積が観察された。反対に、miR-137、miR-181aの阻害オリゴ(inhibitor)を導入することにより、老化歯根膜細胞のROSの減少が観察された。以上の結果より、老化ヒト歯根膜細胞における過剰なROS産生には、miRNAによるマイトファジー関連因子の制御機構が重要であることが示唆された。また、ミトコンドリアの共焦点イメージングにより、正常歯根膜細胞でみられた数珠状形態のミトコンドリアは、老化歯根膜細胞では減少し、断裂した異常形態のミトコンドリアが増大していることが観察された。そして、ミトコンドリア代謝の各種中間体を老化歯根膜細胞に補充することで、正常形態のミトコンドリアの増加と脱分極の改善がみられることを発見した。
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