近年高齢者の歯において、露出した根元の虫歯が急激に増加していることが大きな問題となっている。申請者らはこれまでに、体内にも含まれているビタミンの一種であるリボフラビン(ビタミンB2)と、身体に害が少ないと言われている領域の紫外線(UVA)を組み合わせるという手法を歯に応用することで、歯の中に含まれるコラーゲンの結合を増やし、耐酸性を高め、虫歯を予防する可能性があるという事実を発見した。本研究では、さらにこの方法を応用して、虫歯予防としてすでに様々な場面で用いられるフッ素を組み合わせて作用させることにより、虫歯のさらなる進行を抑制し、かつ歯の再石灰化を目指す、新たな虫歯予防法の開発を目的としている。 ヒト大臼歯の歯根から象牙質試料採取し、pH5.0の脱灰溶液に3 日間浸漬し、表面を一部溶かすことで擬似的にう蝕を作り出した象牙質脱灰試料を用いている。そこに、フッ化ナトリウム、リン酸三カルシウム、カゼインホスホペプチドー非晶質リン酸カルシウム複合体の複数のう蝕予防材に、それぞれリボフラビン溶液浸漬および紫外線照射の処理を施す。これらの試料に対して再石灰化溶液を用いて再石灰化を促進する。脱灰負荷試験前後の試料のμCT3次元画像より、ミネラル密度と脱灰深さを算出し、最適な条件を導き出す。比較として、従来からのう蝕予防材であるフッ化ナトリウム単独でのものを用いる。 脱灰によって失われた無機質を再度沈着させる鍵となるコラーゲン結合部位を新たに作り出し、そこに無機質の再石灰化を試みるという点で全く新しい手法であることから、フッ素を上回る再石灰化効果が見られる材料および条件があれば、新たな根面う蝕予防材として実際の臨床応用することにより、この超高齢社会において根面う蝕の減少に大きく寄与できるであろうという点で非常に重要で意義のあるものであると考えられる。
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