研究課題
Ferritinは、細胞質内の有害な二価鉄を無害な三価鉄に還元し貯蔵する役割を担う。そして、哺乳類の細胞は、鉄過剰時にはFerritinの発現を増加させ、余剰な鉄を安全に貯えることで鉄の細胞毒性を回避していることが報告されている。歯周組織における老化関連分子のcDNAスクリーニングをおこなったところ、ヒトの老化歯根膜細胞においてFerritinの発現が増加していた。Ferritin-鉄代謝は、活性酸素(Reacive Oxygen species : ROS)産生の制御に関係することから、歯周組織内には鉄―酸化ストレスの増大した老化細胞が増加していることが予想された。in vitroにおいて、老化ヒト歯根膜細胞における鉄―酸化ストレスの関連を検討したところ、ROSの蓄積を認めた。また、Ferritinならびにトランスフェリン受容体(TfR1)の発現が増加し、それに伴いIL-6の発現が増加していた。若いヒト歯根膜細胞に鉄を添加すると、FerritinとIL-6の発現は増加し、それは鉄のキレート剤であるDFOの添加により抑制された。このことより、老化ヒト歯根膜細胞ではFerritinの発現機構が破綻することで細胞質内の貯蔵鉄が増加し、細胞質内のROSが増加している可能性が示唆された。老化ヒト歯根膜細胞ではミトコンドリアにおけるクリステの形態異常を認めたことから、細胞質内の鉄の局在を解析したところ、鉄の一部はミトコンドリア内に局在することが観察された。また、若いヒト歯根膜細胞にオートファジー阻害剤を添加したところ、Ferritinの発現増加を認めた。以上のことより、マイトファジーの低下した老化歯根膜細胞では、鉄の蓄積した異常ミトコンドリアが蓄積することで過剰なROSを産生している可能性が示唆された。
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Journal of Periodontal Research
巻: 56 ページ: 951-963
10.1111/jre.12891