研究課題/領域番号 |
20K18548
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
長谷川 智哉 朝日大学, 歯学部, 助教 (80761585)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ケイ酸カルシウム / MTA / ゼオライト / イオン交換 / バイオセラミックシーラー / 歯髄由来幹細胞 / 生体親和性 |
研究実績の概要 |
本研究は、試薬炭酸カルシウムと二酸化ケイ素からケイ酸カルシウムを合成し、高価なMTAセメントのコスト削減を目的として新たな根管充填剤を創出することである。そこで、自硬性のないケイ酸カルシウムに歯科用石膏を添加し、硬化時間の短縮と機械的強度の増強をはかり、さらに陽イオン交換能をもつゼオライトをフィラーとして添加してある種の機能性を付与したセメントを創出するために初年度は石膏添加型合成ケイ酸カルシウムセメントの硬化時間、機械的強度の測定を行い、既存のMTAセメントと同等の物性を得るための条件検討を行った。さらに、フィラーとして添加するゼオライトのイオン交換を試みた。用いたゼオライトは骨格にナトリウムNaを含むものを使用した。このNa型のゼオライトは骨格の負電荷を補償するためにナトリウムイオンをもつ。これを歯科治療に有効な成分である抗菌効果をもつ銀イオンや亜鉛イオン、石灰化誘導が期待されるカルシウムイオンなどへと変換し、その含有量比を変化させることで、陽イオン徐放型フィラーを試作した。ゼオライト粉末の各種水溶液中への浸漬時間や温度を変化させることで、ゼオライト内に存在するナトリウムイオンをカルシウムイオン, 銀イオン, 亜鉛イオンと交換したゼオライトサンプルを調製した。イオン交換前後のゼオライト粉末に対する分析は、X線構造回折解析(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)、エネルギー分散型X線分析(EDS)および蛍光X線分析装置(XRF)により評価を行い、異なるイオン種およびイオン量を有するゼオライト粉末が得られたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、試薬から合成して作製した石膏添加型ケイ酸カルシウムセメントの物性評価を行い、さらに陽イオン交換能をもつゼオライトをフィラーとして添加するため、異なるイオン種およびイオン量を有するゼオライト粉末を試作することができ、研究計画を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果をふまえ、当初の計画通り、種々のゼオライト含有石膏添加型ケイ酸カルシウムセメントを作製して、硬化時間、機械的強度等の物性解析を行うほか、硬化後のセメントを細胞培養培地に投入し、セメントから溶出する成分を含む培地を用いてヒト歯髄由来幹細胞を培養する。また、硬化したセメント試料をヌードマウスの皮下に移植して生体反応を解析する。以上の、培養系および動物モデルを用いて試作セメントの生態親和性の評価を行う。さらに、抗菌作用を目的とするゼオライトを添加した試作セメントではミュータンス菌(Mutans streptococci等)やPorphyromonas gingivalis,Fusobacterium nucleatum等の培養系に、試作セメントを各種の割合で投入し、菌体の付着や増殖を評価する。
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