本研究は、歯髄除去後の歯髄を再生する、真に細胞生物学的な歯髄治療法(歯髄幹細胞による歯髄と象牙質の再生)の実用化へ向けて歯髄由来幹細胞新規分離膜による歯髄組織由来膜分取幹細胞(tissue derived-MDPSCs)の分取法の確立を目的とする。国立長寿医療研究センターにて2013年4月から、不可逆性歯髄炎に罹患し、健全な歯髄を有する不用歯を提供できる患者を対象に5症例の歯髄再生の臨床研究が実施された。その結果、安全性・有効性に問題ないことが確認された。実用化に向け、より高機能・高品質なヒト歯髄幹細胞を簡便、安価、高効率に分取可能な方法が必要である。今回、新規分離膜(ネッパジーン)による歯髄由来幹細胞膜分取法(中島、2013年)と摘出したヒト歯髄組織片のExplant Culture( L. Spath、2010)を組み合わせ、歯髄幹細胞を分取・培養し細胞表面マーカーにて高品質な幹細胞であることを確認後、増殖能、遊走能、多分化能、RT‐PCR法やWestern blot法といった分子生物学的手法によりMDPSCs(歯髄膜分取幹細胞)、DPSCs、Explant Cultureと比較検討した。コロナ渦による新規分離膜の開発は遅れていたが、新規分離膜の入手後は順調に進行した。tissue derived-MDPSCs、はMDPSCsと比較して増殖能、遊走能、RT‐PCR、神経・血管誘導において有意差のない結果となりDPSCs、Explant Cultureと比較して有意差のある良好な結果を得られた。令和2年歯科保存学会春季学術大会(第153回)にて架橋形抑制コラーゲンにおける魚由来コラーゲンペプチドのin vitro石灰化に及ぼす影響を共同研究発表した。現在データーの整理を行っており令和5年秋季歯科保存学会春季学術大会(第159回)にて発表予定である。
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