研究課題/領域番号 |
20K18570
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊藤 達郎 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (70750933)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スラリー埋没加熱処理 / リン酸カルシウム析出能 / 表面解析 |
研究実績の概要 |
ジルコニアの加工および表面処理:ジルコニアの中でも、現在、広く臨床応用されているイットリウム安定型ジルコニア(YSZ)を実験材料として用いた。それを直径21.5mmのディスク状に加工し、エメリー紙#1000で表面研磨を行った。その後、ジルコニアディスクを大気雰囲気中950℃、2時間でスラリー埋没加熱処理を施した。 試料の表面分析:実際に試料表面にHApが付着したかを確認するために、試料を走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて観察したところ、スラリー埋没加熱処理した試料表面に粒状の付着物が存在することを確認した。また、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDS)にて試料表面特性を観察したところ、粒状物が多い箇所で分析したEDSスペクトルのみでCaとPのピークが確認でき、粒状物はリン酸化合物であることが認められた。 リン酸カルシウム析出能の評価:表面未処理およびスラリー処理した試料を37℃に保った疑似体液中に72時間浸漬するとスラリー処理Zr上でリン酸カルシウムの析出を認めた。さらに、表面処理温度を650℃、800℃、950℃および1100℃と条件を増やして比較検討したところ、950℃において最も高いリン酸カルシウム析出能が認められた。 これにより、スラリー埋没加熱処理法を用いてYSZ表面にHAp粒状物を固着することが可能であり、つまりYSZ表面に生体活性能を付与可能であることが示唆された。また、YSZの表面処理至適温度が950℃であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度は新型コロナの影響により動物実験室の使用がが制限されていたために、研究の進捗に遅れが生じた。また、同年に北海道大学から金沢大学に異動したが、新型コロナの影響により金沢大学における動物実験に関する講習会の開催が制限されていたため、さらなる遅れを生じた。 その後も、新型コロナの流行により臨床(病院外来業務)のエフォートが増加したものの、教育のエフォートに増減がなかったため、その分研究のエフォートが減少したことによりさらに研究の遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞培養実験:スラリー処理Zrおよび未処理Zrディスク上にヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC-BM)を播種、培養し、評価項目は次の通り行う。 (1)細胞接着能の評価:1日および3日間培養後、WST-1にて評価する。(2)細胞分化能の評価:1週および2週間試料上で培養後、骨関連タンパクとしてアルカリフォスファターゼ活性をLabAssay ALPにて計測する。さらに、骨関連遺伝子としてCbfa1およびオステオポンチン(OP)、オステオカルシン(OC)をRT-PCRにて計測する。 動物埋入実験:スラリー処置Zrワイヤーと未処理Zrワイヤーを10週齢雄性ラットの左側大腿骨に2本埋入し、2および8週後に摘出し、病理組織学的ならびに組織 計量学的検索を行い、試料に骨親和性が付与できているか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により研究の遅延が生じたため。今年度培養実験用の試薬の購入、動物実験にて用いるラットの購入、試薬の購入、および消耗品の購入費として使用を計画している。
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