研究実績の概要 |
2020年からの3年間で,赤外自由電子レーザーによる有機-無機ハイブリッド材料に対するアブレーション実験を行い,波長依存性やエネルギー依存性等の諸条件を検討・比較した.初年度は東京理科大学の赤外自由電子レーザー(FEL-TUS)を用いて実験を行ったが,年度途中より老朽化により稼働を停止した為,京都大学設置の赤外自由電子レーザー(KU-FEL)を用いて実験を継続した.京都大学の赤外自由電子レーザーは2Hzで稼働していたため,メカニカルシャッターを光路に挿入し,更に試料を設置する自動ステージのプログラムを制御して,約5mm間隔で1パルスのみが照射されるように実験系を最適化した.その系を用いて,PTFE, PMMA, PVDF, PCTFE等の単一組成の樹脂材料を用い,照射実験を行って加工深さと波長・レーザーエネルギーの相関を調べた.その結果,分子の吸収に共鳴する波長の光は吸収の無い光と比較し,優位に加工深さの増加と熱損傷の減少が認められた.この結果から,加工時の表面の化学反応を追跡することにした.クロスタイプのガスセルの一軸を照射系とし,フッ化バリウム(後に臭化カリウムへ変更)窓を片端に取り付けた.もう一軸はFT-IRによる解析系とし,両端にフッ化パリウムの窓を取り付けた.その後,ターボ分子ポンプを接続し,試料をガスセルに封入後,10^-2Paまで減圧されるような実験系を構築した.PTFEを試料とし,分子の吸収に共鳴する赤外レーザー光を照射した.また,分子の吸収に共鳴しないNd:YAGレーザー(波長532 nm)を照射し,同様の実験を行った.この結果,異なる組成の気体が検出された.現在,これらの結果を整理し,論文執筆中である.
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