研究課題/領域番号 |
20K18586
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
堀 美喜 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (40804422)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗菌性評価法 / 銀 / 解毒代謝系 / GST |
研究実績の概要 |
これまでに我々は頻用される歯科材料の一つであるメチルメタクリレートが細胞内でどのような代謝経路を辿るのかをマイクロアレイにて検証し、結果GSTによる抱合を受けることが判明した。解毒代謝系第2相に含まれるこの代謝経路は、Keap1-Nrf2代謝経路を介し、親電子性物質応答配列(ARE)を活性化することにより酵素を生成する。この事実を元に、生物発光遺伝子(ホタルルシフェラーゼ)を使用したレポーターアッセイ法にてAREの活性化率を定量的に評価する方法を確立した。本評価法をメタクリロイロキシ基を主骨格に持つ有機材料だけでなく、歯科用合金に含有される金、銀、銅に対して評価を行ったところ、銀、銅に対し非常に高いARE活性を示すことが判明した。 歯科だけでなく医科領域においても、インプラント材料の表面に抗菌作用を目的とした銀コーティングを行った製品が使用されている。しかし、この銀コーティングによる抗菌性の評価方法は確立されていない。そこで、細菌にレポーターアッセイ法を適応した銀に特化した抗菌性の評価法の確立を目的とした。 まず、3種類の代表的な細菌の大腸菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌を用い、銀に接触させた時に抗酸化物質を生成するかどうかを検証した。銀は平均粒径10μmの粒子をオートクレーブ滅菌したものを用いた。培養時間は15分とし、グルタール固定、オスミウム固定を行った後、酸化ストレスの原因となりうる過酸化水素の発生はNBT法、活性酸素の発生の有無はセリウム塩法を用いてTEMによる形態観察を行った。大腸菌、黄色ブドウ球菌はコントロールと比較して銀に接触したものの変化は観察されなかった。しかし、表皮ぶどう球菌は菌の周辺に活性酸素の存在を認めた。他の2種の細菌に対しても現在銀の粒径、処理方法により反応の差異がないか検証を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年は例年と比較して新型コロナ蔓延による教育業務の変更が非常に多く、オンライン配信、動画準備等で忙殺された。また、形態観察による評価が実験手法が煩雑であることから計画通りに実験が遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現時点の形態解析の結果、大腸菌と黄色ブドウ球菌の銀接触の有無による差異が観察されていない。しかし、他の金属接触時にGST解毒代謝系が動作しているという論文も散見されることから、銀イオン溶液を使用する、銀の新鮮面露出直後に接触させた細菌の形態解析を追加するなどの評価を行う。また、遺伝子解析を含め細胞の解毒代謝系に該当する活性化遺伝子群の解析を行う。 次に、細菌で使用できるレポーター遺伝子を用い、発光量の測定を行う。発光量が足りなければ、遺伝子配列をコドンユーセージ表に則ってタンパク質発現量の増加を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
細菌の遺伝子操作まで前年度で辿り着くことができなかった。本年度、銀の解毒代謝経路の特定およびレポーターアッセイ法の適応に向けて費用を使用する。
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