研究実績の概要 |
広範囲の顎骨欠損を生じた症例において補綴装置による十分な機能回復を得るためには,補綴装置を支える骨組織を再生する技術の開発が重要な課題となる。 サーカディアンリズムは、約24時間周期で変動する生理現象で、睡眠、呼吸や体温などが制御されており(Schmidt et al., 2017)、哺乳動物では、体内時計の中 枢である視交叉上核(SCN)によって制御されている。bHLH型転写因子であるBmal1、Clock、Npas2は時計遺伝子と呼ばれ、ヘテロ二量体を形成し、Per、Cry、RORs、Rev-ERBs等の遺伝子転写翻訳機構を介してネガティブ、ポジティブフィードバックループを形成し、転写を約24時間周期で増減させることで、サーカディ アンリズムを形成する。 近年の研究では、時計遺伝子には、サーカディアンリズムの制御以外に、細胞増殖や分化に関わることが報告されている。本研究では、骨芽細胞分化における Npas2の機能発現に着目し、Npas2が骨芽細胞分化機構に及ぼす影響を解明することとした。 以上を背景に、本研究の目的は、時計遺伝子Npas2がマウス骨髄間質細胞(BMSC)の骨芽細胞分化に及ぼす影響を明らかにすることである。 2021年度は、時計遺伝子が骨芽細胞分化に及ぼす影響を試験管内で検討した。解析対象の細胞として、BMSCの他に、マウスiPS細胞を用いた。特に時計遺伝子Npas2の発現を抑制させた環境下での骨芽細胞分化に及ぼす影響を組織的解析法と遺伝子発現解析法を用いて検討した。 実験の結果、マウスiPS細胞にNpas2発現抑制作用の有する薬剤を添加して骨芽細胞分化誘導を行っても、マウスiPS細胞の骨芽細胞分化に対して影響を及さないことが明らかとなった。また、マウスiPS細胞の骨芽細胞分化過程における時計遺伝子の発現を解析したところ、その発現に特徴的なリズムを認めた。
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