咬合機能の維持・回復には,歯根膜の組織特性の理解が不可欠である.これまでの研究から,歯根膜細胞は部位特異的な特徴を有する不均一な 組織であることが 間接的に示唆されているが,その詳細と制御メカニズムは依然として不明である.本研究では低酸素応答分子であるHIF-1に よるTGFβ-Smad経路を介した線維形 成の活性化が,”高密度な線維形成”という部位特異性を生み出しているのではないかとの仮説の検証を目 的とする.歯根膜の部位特異性の理解は,補綴処置に 付随して歯周組織に生じる,様々な臨床症状を生物学的に理解するための基礎的情報とし て極めて重要であり,臨床/学術的に高い意義を有している. 歯根膜の 線維密度,走行は部位によって異なっている.これは咬合力に抵抗する形態として効果的な配列がされているという説明がされることが多いが,その制御機構や 影響を及ぼす因子についてはほとんど明らかとなっていない.申請者らは歯根膜組織における血管の偏在と線維密度の 相関に着目し,この両者を結びつける分子 として,低酸素に誘導されるHIF-1と線維形成とその成熟に重要なTGFβに着眼した.本研究の目的は,歯根膜線維の部位特異性を生み出す解剖学的特徴と,これ を制御する分子的背景を明らかにするため,血管の偏在によって生じる組織中の酸 素分圧勾配と,低酸素に誘導されるHIF-1によるTGFβ-Smad経路を介した線維 形成の活性化メカニズムを明らかにすることである. 本年度は定量性の高い線維の評価法である2光子顕微鏡によるSecond Harmonic Generationによる線維の検出と,CT-FIRE (UW-Madison)による定量解析を行なった.シグナル経路の検出を目的とし,マウス歯根膜の凍結組織標本を作製し,質量分析装置を用いてプロテオミクスの解析を行なった.¥
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