歯根膜組織の維持・再生において組織幹細胞が重要な役割を果たしているが、その分化機構については、未だ不明である。幹細胞の分化には細胞外基質自身が活性物質として機能するだけでなく、その機械的特性が細胞外微小環境として影響を及ぼすことが多くの正常組織や病態において示唆されている。線維型マイナーコラーゲンの一種であるⅤ型コラーゲンは、コラーゲンの豊富な結合組織において線維の組織化に寄与し、その機械的特性に影響を及ぼすことが知られている。Ⅴ型コラーゲンは、歯根膜組織においても豊富に存在することから、線維の組織化を介して、歯根膜の組織幹細胞の維持と分化に影響を及ぼしている可能性が高い。これまでの先行研究において、幹細胞における細胞外基質の2次構造を起点とした細胞機能の制御メカニズムについて明らかにしてきたが、その詳細な分子メカニズムについては未だ不明である。 本研究では、歯根膜由来細胞を用いて、細胞外微小環境を制御する因子としてのⅤ型コラーゲンが細胞外基質の特性に及ぼす影響および幹細胞分化制御に及ぼす影響を解析した。具体的には、4週齢雄性SDラットより上下顎臼歯を抜歯し、得た歯根膜細胞に対してsiRNAを用いてCol5a1遺伝子をノックダウンし、その直後および1週間培養後にサンプルを採取した。コラーゲン修飾酵素であるLysyl Oxidase (LOX)およびⅤ型コラーゲンと会合体を形成するⅠ型コラーゲンの遺伝子発現およびタンパク質発現をモニターし、Col5a1の阻害がLOXおよびⅠ型コラーゲンに及ぼす影響を解析した。また、Col5a1遺伝子をノックダウンして得た細胞外基質上で骨髄由来幹細胞の分化能を解析した。
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