研究課題/領域番号 |
20K18596
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中谷 早希 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10804487)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 接着歯学 / 接着阻害因子 |
研究実績の概要 |
ヒト大臼歯象牙質平滑面に,板状アクリルレジンをカルボキシレート系仮着剤にて仮着して,1週間蒸留水中に保存した.レジン板を除去後、エアスケーラーで清掃を行い①新規汚染除去剤(MDP含有クリーナー)を塗布し,20秒間水洗した群(MC群)②新規汚染除去剤を擦り塗りし水洗した群(MC+AG群)③蒸留水を擦り塗りし水洗した群(AG群)でそれぞれ仮着材を除去し試料を作製した.またヒト大臼歯象牙質平滑面に5%MDP溶液を塗布した群を④MDP群として試料を作製した.MC群,MC+AG群,AG群の試料においてはSEM観察、EDS分析を行った.また、MC+AG群,MDP群においては被着面の接触角を測定した.また、MC+AG群においてはさらにCAD/CAM冠用レジン板をレジンセメントを用いて接着し,24時間,1か月間,6か月間水中に浸漬後μTBS試験を行い,先行研究にて測定していた従来の仮着材除去法と比較を行った. <SEM観察>AG群では被着面全体に, MC群でも一部分に仮着材が残存していたが,MC+AG群では仮着材は観察されなかった. <EDS分析>仮着材に含まれる酸化亜鉛をターゲットにマッピングを行った結果,AG群ではSEM像で被着面全体に,またMC群では,SEM像の仮着材の残存部位と一致する部分にZnを検出し,MC+AG群ではZnは検出されなかった. <接触角>耐水ペーパーにて象牙質研磨だけを行った群(仮着材の汚染のない群:Co群)と比較すると, MC+AG群,MDP群は接触角が有意に大きかった. <μTBS試験>MC+AG群の接着強さはCo群と有意差はないものの,MC+AG群の方が高い傾向にあった. 以上よりエアスケーラーによる機械的除去に続くMDP含有クリーナーを用いた擦り洗いは仮着材成分の除去に有効であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は仮着材除去後の残存状態の「被着面形態の観察」と「表面分析」および「接着試験」を行う予定であった.上記のとおり被着面のSEM観察,EDS分析および接触角測定,接着試験はすべて予定通り行われている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度はCAD/CAM冠を装着する被着体として象牙質を想定し,仮着材の除去効果と接着強さを評価し,新規汚染除去剤(MDP含有クリーナー)は仮着材除去に有効であることを確認した.CAD/CAM冠を装着する被着体としては支台築造用コンポジットレジンであることも非常に多いため,今後は被着体として支台築造用コンポジットレジンを想定して引き続き評価を行なっていく予定である.以下に予定している具体的な研究内容を示す. 支台築造用コンポジットレジンを用いて試料体を作製し,被着面を耐水研磨紙で研磨する.暫間被覆冠を想定して即時重合レジンを用いてレジン板を作製し,カルボキシレート系仮着材を用いて,荷重下で試料体に仮着し,37 ℃蒸留水中に1 週間浸漬する.仮着材除去の方法は,これまでの研究において有効な手法であったエアスケーラーを用いて除去後,①新規汚染除去剤(MDP含有クリーナー)をマイクロブラシにて擦拭後,水洗②蒸留水をマイクロブラシにて擦拭後,水洗③リン酸処理後,水洗さらに次亜塩素酸処理後,水洗の3通りの方法で行う.これらの試料を今年度に行ったものと同様の手法を用いてSEM観察等を行う.また,さらにCAD/CAM冠用レジンブロック被着面はアルミナブラスト処理,シラン処理を行い,仮着材を除去した試料体被着面に,セルフアドヒーシブ型接着性レジンセメントにて接着し,蒸留水中に浸漬したのち,接着試験を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは当初の想定より旅費,人件費・謝金が軽減できたためである. 次年度の実験に必要な物品購入と成果を発表するための論文作成・投稿費に使用する.
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