超高齢社会では、要介護者の増加によるさらなる医療費や介護費の増大や人材不足が懸念されている。介護予防には、認知症とともにサルコペニア、フレイルを予防することが重要である。これまで口腔機能と全身の疾患、機能との関連が多数報告されているが、口腔機能とサルコペニア、フレイルとの関連についての長期縦断研究は少ない。そこで本研究では、地域高齢者を対象として行う縦断研究によって、口腔機能とサルコペニア、フレイルの発症との関連について明らかとすることを目的とした。 2021年度は、感染対策を徹底したうえで昨年度予定していた80歳群ならびに元々予定していた90歳群に対する会場調査を行った。 研究実績としては、口腔機能と筋力や身体能力の関連について調べた77~81歳の地域住民511名(男性254名、女性257名)を対象とし、口腔乾燥、咬合力、舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼能力、嚥下機能の6項目を測定した。また、握力と歩行速度の測定も行った。分析の結果、咬合力、舌口唇運動機能、咀嚼能力、嚥下機能は、握力、歩行速度と有意に関連した。また、舌圧は握力と有意に関連した。筋力や身体能力とは異なる口腔機能指標が存在し、これらの口腔機能指標は身体的フレイルの指標として有用である可能性が示唆された。また、臼歯部遊離端欠損と義歯装着が支台歯に加わる咬合力に及ぼす影響を検討した。遊離端欠損歯列に対して有床義歯による欠損補綴治療を行ったもの55名の咬合力を測定した。得られた結果と歯列を重ねあわせ、歯列内の咬合接触点の部位を1歯ごとに特定した。欠損に隣接する直接支台歯に加わる咬合力を算出し評価したところ、義歯非装着時よりも装着時に有意に小さくなった。義歯装着により支台歯咬合力が減少することが示され、欠損拡大の防止、ひいては口腔機能低下の防止につながることが予想される。
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