変形性関節症(OA)は関節軟骨の変性を主体とする加齢性疾患である。近年、OAの病態進行には老化細胞の組織中への蓄積の関連性が示されている。本研究課題の目的は、軟骨組織において多様な生理機能を持つCellular Communication Network Factor(CCN)ファミリー遺伝子のうち、CCN3が細胞老化にどのように関わっているかを解明することである。当該年度までに得られた結果を以下に示す。1.ヒト・マウス初代関節軟骨細胞において年齢とCCN3遺伝子発現レベルに正の相関関係を認めた。2.ヒト初代関節軟骨細胞への人為的な細胞老化誘導によりCCN3の発現上昇を認めた。3.軟骨細胞様細胞株におけるCCN3の過剰発現によりp21プロモーターが誘導され、p21およびp53遺伝子発現レベルが上昇した。4.軟骨組織特異的CCN3過剰発現マウスの関節軟骨組織の変性所見を認め、同マウス軟骨細胞においてSASP-factor上昇が見出されたことから、CCN3が軟骨細胞老化を促進させることによって関節軟骨変性が生じることが示唆された。 当該年度は、CCN3発現誘導に関わる転写調節因子の検索を行った。ヒト初代関節軟骨細胞のRNAを用いたマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行い、その結果から年齢で発現変動があった転写因子群を抽出した。さらにその転写因子群とCCN3との関連、CCN3を介した細胞周期停止機構の解明に加え、CCN3の発現阻害による軟骨組織変性の制御等について今後更なる解析を目指している。
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