研究課題/領域番号 |
20K18607
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
早野 博紀 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (20866644)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 薬剤関連顎骨壊死 / BRONJ / ビスホスホネート製剤 / マクロファージ / リンパ管内皮細胞 / 分化転換 |
研究実績の概要 |
ビスホスホネート(BP)製剤と抗RANKL抗体製剤が惹起する薬剤関連顎骨壊死(それぞれBRONJとDRONJ)の確定的な病因は不明で決定的な治療方法は存在しないが,リンパ管形成の点から,BRONJとDRONJの免疫病理学的所見が異なることを突き止めた.一方近年,炎症創部における骨髄由来CD11b+F4/80+LYVE-1+マクロファージのリンパ管内皮細胞への分化転換が報告された.そこで研究代表者は,口腔創部に動員される骨髄由来マクロファージの減少とリンパ管内皮細胞への分化転換阻害に起因して,BRONJとDRONJの発症機構は異なると仮説を立てた.本研究の目的は,開発した抜歯誘発性高頻度発現型BRONJ/DRONJモデルを実験ツールとして使用し,マクロファージの分化転換を基軸とした薬剤関連顎骨壊死の発症機構を解明することにある.当該年度では開発した高頻度発現型BRONJマウスモデルを用い,マクロファージの全身的枯渇を行って,BRONJ様病変部位におけるマクロファージとリンパ管形成の挙動を追跡した.その結果,マクロファージの全身的枯渇は脾臓や長管骨骨髄のマクロファージを一時的に減少させることが確認でき,さらにBRONJ様病変部位では,マクロファージが有意に減少してBRONJ様病変の著しい悪化が認められたが,M1マクロファージは有意に増加し,M2マクロファージは有意に減少することでその極性がM1へとシフトしていることを突き止めた.さらにリンパ管形成も有意に抑制されていたことから,マクロファージのリンパ管内皮細胞分化転換が阻害された結果,BRONJ様病変が悪化する可能性が考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発済みのBRONJ様病変モデルとクロドロン酸内包リポソームシステムを応用し,マクロファージはBRONJの病態形成に必要で,さらに分化転換にも影響している可能性をとらえることができたため,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
1.CD11b+F4/80+LYVE1+マクロファージ(MΦ)の形態・機能解析研究[In vitro研究]:特定された標的臓器(骨髄)よりソーティングされたCD11b+F4/80+LYVE-1陽性と陰性MΦをBP製剤もしくは抗RANKL抗体存在/非存在下で,リンパ管内皮細胞用分化培地を用いて培養する.管腔構造解析,リンパ管内皮細胞が産生するCCL21を用いた細胞遊走性解析,ならびに回収細胞から抽出・作成した遺伝子とタンパク質から定量qPCRとウエスタンブロッティングをそれぞれ行い,CD11b+F4/80+LYVE-1陽性MΦにはリンパ管内皮細胞への分化転換能が存在し,CD11b+F4/80+LYVE-1陰性MΦには分化転換能がないことを,また,リンパ管としての機能や特徴的形態があるかを検討する.2.BRONJ・DRONJモデルへの骨髄由来CD11b+F4/80+LYVE-1+MΦ移植研究[In vivo研究]:BRONJとDRONJモデルに対し,研究代表者の所属講座と共同研究を行う東海大学より提供を受けるeGFP-Tgマウスから採取したCD11b+F4/80+LYVE-1陽性と陰性MΦの移植実験を行う予定である.具体的には抜歯4週間後にBRONJまたはDRONJの診断を行い,その後, GFP+CD11b+F4/80+LYVE-1陽性もしくは陰性MΦを尾静脈から移植する.細胞移植2週間後に屠殺し,CD11b+F4/80+LYVE-1陽性MΦだけがBRONJを寛解すること,ならびに,創部にGFP+CD11b+F4/80+LYVE-1陽性MΦが集積してリンパ管内皮細胞へ分化するか否かを確認する.一方,DRONJモデルでは病態が改善しないことも確認する.
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